【この記事は加筆・修正を加え、2023年2月27日に最新版に更新されました】
「利益は増えているのに、現金(キャッシュ)が足りなくて困っている」
「いつまで経っても、なかなか資金繰りが安定しない・・・」
このように感じている中小企業の経営者も多いのではないでしょうか?
実は、それはキャッシュフロー経営を構築できていないのが原因かもしれません。
キャッシュフロー経営を意識して行っていれば、現金(キャッシュ)が足りなくなる可能性は低いからです。
そこで本記事では、「そもそもキャッシュフロー経営とは何なのか?」ということから他の経営方法との違い・メリット・始め方まで、キャッシュフロー経営について網羅的にまとめました。
ぜひ本記事を読んで、キャッシュフロー経営を意識した会社の仕組み作りを始めてみてください。
目次
キャッシュフロー経営について解説する前に、まずは「キャッシュフロー」について理解しておきましょう。
まず簡単に結論から申し上げると、キャッシュフローとは現金(キャッシュ)の出入りのことです。
主に以下の式で表されます。
キャッシュフロー(収支)= キャッシュイン(収入)− キャッシュアウト(支出)
この式が表す通り、キャッシュイン(収入)がキャッシュアウト(支出)よりも多ければ、キャッシュフロー(収支)はプラスになります。
逆に、キャッシュイン(収入)がキャッシュアウト(支出)よりも少なければ、キャッシュフロー(収支)はマイナスになります。
では、なぜこんな簡単な計算をしてまでキャッシュフローを求める必要があるのでしょうか?
それは、「利益」と「キャッシュフロー」の違いにあります。
利益は、取引が発生した時点で数字が計上されます。
現金(キャッシュ)の動きがあったかどうかは関係ありません。
100万円の売上が確定すれば、現金(キャッシュ)が増えていなくても利益は100万円増えます。
これに対して、キャッシュフローは現金の出入りがないと数字が計上されません。
100万円の売上の確定も、現金(キャッシュ)を回収しないとキャッシュフローは増加しないということです。
現金(キャッシュ)を回収して、ようやく数字として計上されるのです。
要は、利益が増えたとしても実際に現金が増えるまでには多少の時間差があるということです。
上記で解説した通り、利益とキャッシュフローでは数字として計上されるまでの時間差があるため、損益計算書の利益の数字だけでは会社が実際に持っている現金(キャッシュ)の量が正確に把握できません。
そのため、経営者が正しい意思決定を行っていくためには、キャッシュフローを意識した経営が必要になってきます。
このように現金(キャッシュ)を重視した経営のことを「キャッシュフロー経営」と呼びます。
キャッシュフロー経営は、他の経営方法と大きな違いがあります。
そこで、ここからは他の経営方法との違いを具体的に説明していきます。
まずは、「利益重視の経営」との違いからです。
利益重視の経営とは、現金(キャッシュ)や売上ではなく、とにかく利益だけを追求する経営のことを言います。
ただ利益だけを重視しただけの経営は、現金(キャッシュ)が不足する危険性があります。
例えば、100万円の製品を1つ作るのに80万円の現金(キャッシュ)がかかるとしましょう。
利益だけを重視する経営の場合、1つ売るごとに20万円の利益が出るため、とにかく数を多く売ることを優先します。
しかし、本当にこの製品はたくさん売れた方がいいのでしょうか?
もちろん、売れば売るほど利益は上がっていきますが、実際には一時的に手元の現金(キャッシュ)が大きく減っていく可能性があります。
現金(キャッシュ)がすぐに回収できれば話は別ですが、すべての商品・サービスが現金(キャッシュ)をすぐに回収できるとは限りません。
つまり、現金(キャッシュ)がすぐに回収できない場合、1つ売るごとに20万円の利益が出ますが、逆に80万円の現金(キャッシュ)がなくなっていくということです。
10個売れば800万円・50個売れば4,000万円の現金(キャッシュ)が手元からどんどん出ていく計算です。
そのため、利益重視の経営だけでは、利益は増えているのになぜか現金(キャッシュ)が足りないという状況に陥りがちです。
しかし、キャッシュフロー経営を導入すると現金(キャッシュ)を重視して経営を行うため、目先の利益だけに目がくらんで現金(キャッシュ)が足りなくなるという状況には決して陥りません。
これが利益重視の経営とキャッシュフロー経営との違いです。
次に、キャッシュフロー経営と「売上重視の経営」との違いを解説していきます。
売上重視の経営とは、利益や現金(キャッシュ)よりも、ただ売上額を上げることを重視した経営のことです。
売上額だけを重視した経営を行うと、利益重視の経営と同じように現金(キャッシュ)が手元に残らない危険性があります。
先ほどと同じように、100万円の製品を1つ作るのに80万円の現金(キャッシュ)がかかるとして考えてみましょう。
売上重視の経営では、とにかく売上額を上げることを優先するあまり、仮に商品が売れなかった時には値引・割引などをしてでも商品を売ろうとします。
その商品に対する原価や経費がいくらかかったというのは、あまり関係ありません。
そのため、100万円の製品が売れなかった場合は、原価よりも安い70万円などの価格でもとにかく売るという選択に陥りがちです。
では、この製品を70万円で売り続けるとどうなるでしょうか?
運良く現金(キャッシュ)がすぐに回収できたとしても、1つ売るごとに10万円の現金(キャッシュ)が減っていくことになります。
10個なら100万円・50個なら500万円です。
このように売上重視の経営だけでは、目先の売上額に目がいってしまい、利益や現金(キャッシュ)を失うという結果につながることがあります。
しかし、キャッシュフロー経営を導入すると現金(キャッシュ)を優先して経営を行うので、売上額だけを優先して現金(キャッシュ)がなくなることはありません。
売上だけを重視する経営との大きな違いはここです。
上記のキャッシュフロー経営と他の経営方法との違いでも少し解説しましたが、キャッシュフロー経営には他の経営方法にはないメリットがあります。
そこでここからは、キャッシュフロー経営にどんなメリットがあるのか詳しく解説していきます。
キャッシュフロー経営のメリットは、以下の3つです。
キャッシュフロー経営の最大のメリットは、経営が安定することです。
利益が出ていても、現金(キャッシュ)が足りないことが原因で倒産してしまうことを「黒字倒産」と言います。
キャッシュフロー経営なら、このような「黒字倒産」が起こる確率を大幅に減らすことができます。
なぜなら、現金(キャッシュ)が不足する前に事前に対処することができるようになるからです。
中小企業経営には、倒産以外にもさまざまなリスクが伴います。
倒産する可能性が低かったとしても、日頃からキャッシュフロー経営で安定した会社を構築しておくことを心がけましょう。
キャッシュフロー経営のメリット2つ目は、経営判断の選択肢が増えることです。
会社の経営判断には現金(キャッシュ)が必要になることがほとんどだからです。
こんな時に現金(キャッシュ)が足りないとどうなるでしょうか?
限られた選択しかできず、大切な事業の成長機会を失ってしまいます。
キャッシュフロー経営を意識して現金(キャッシュ)をコントロールしていくことで、適切なタイミングで適切な経営判断ができるようになります。
キャッシュフロー経営のメリット3つ目は、信用が高まることです。
金融機関は、「現金(キャッシュ)が足りなくなったから」という理由で急にお金を貸してくれるほど都合の良い機関ではありません。
お金を返してくれる見込みがない人には、そもそもお金を貸したくないからです。
当たり前のことです。
しかし、キャッシュフロー経営を意識して、普段から現金(キャッシュ)がしっかりと確保できていれば、金融機関からの信用が高まり、融資を受けられる可能性が高まります。
「融資を受けるつもりはないから大丈夫」ではなく、お金を借りたくなった時にいつでも借りられるように、キャッシュフロー経営で常に融資が受けられる財務管理体制を構築しておきましょう。
最後に、キャッシュフロー経営を取り入れるべき会社とその始め方について解説していきます。
まずは、どんな会社がキャッシュフロー経営を取り入れるべきなのかについてです。
個人的には事業を行うすべての中小企業が取り入れるべき経営方法だと考えていますが、特にキャッシュフロー経営を取り入れるべき会社は以下の3つです。
このような会社は、今すぐにでもキャッシュフロー経営を取り入れるといいでしょう。
「なぜ取り入れるべきなのか?」ということについては、キャッシュフロー経営のメリットの章で紹介した以下の3つが主な理由です。
では、このような会社はどのようにしてキャッシュフロー経営を始めていけばよいのでしょうか?
キャッシュフロー経営の具体的な手順は、以下の通りです。
キャッシュフロー経営を行うためには、キャッシュフロー計算書・資金繰り表を見ながら経営判断を行っていく必要があります。
そのため、キャッシュフロー経営を始める場合には、まずはキャッシュフロー計算書・資金繰り表を作ることから始めましょう。
キャッシュフロー計算書・資金繰り表は、前期分と当期分の損益計算書と貸借対照表があれば簡単に作れます。
詳しくは以下の記事で解説していますので、キャッシュフロー経営を始めたいと思った方は、参考にしてみてください。
関連記事:キャッシュフロー計算書・資金繰り表の作り方!ひな形を使って実践
また、キャッシュフロー計算書・資金繰り表は、ただ作るだけではあまり意味がありません。
現在の会社の状況を正しく把握するために、適切に分析をする必要があります。
営業活動によるキャッシュフロー・フリーキャッシュフローなど、キャッシュフロー計算書・資金繰り表の見方については、以下の記事で詳しく解説しています。
キャッシュフロー計算書・資金繰り表を見て、しっかりと分析ができるようにしておきましょう。
関連記事:キャッシュフロー計算書・資金繰り表とは?目的から見方までわかりやすく解説
キャッシュフロー経営について理解していただけたでしょうか?
キャッシュフロー経営というのは、ただ理解するだけでは意味がありません。
実際に会社の仕組みに取り入れてこそ、大きな意味があります。
「キャッシュフロー経営で資金繰りを安定させたい」
「キャッシュフロー経営で安心して会社を成長させていきたい」
このような経営者の方は、今すぐキャッシュフロー計算書・資金繰り表の作成から始めてみましょう。