起業・開業する人の多くが、自己資金だけではなく、外部からの融資を活用しています。
しかし、そもそも「創業に必要な資金をどこで調達したらよいのかよく分からない」という方も多いのではないでしょうか?
起業・開業時の資金調達である創業融資は、日本政策金融公庫や銀行などの金融機関で借りることができ、他の融資にはない特徴がいくつかあります。
創業融資は申し込むタイミングや準備が独特なので、計画的に準備をしてから適切なタイミングで申し込むことが重要です。
そこで本記事では、創業融資の概要や資金調達までの流れ・申し込む前に準備すべきポイントについて詳しく解説していきます。
目次
創業融資とは、創業前と創業後の一定期間内に事業で必要な資金を融資してくれるものを言います。
という3つの特徴があります。
まずは、創業融資の3つの特徴について詳しく解説していきます。
創業融資の融資元は、以下の2種類となります。
それぞれの違いについて理解しておきましょう。
日本政策金融公庫とは、国が100%出資している公的な金融機関です。
国の政策目標にかなったさまざまな融資制度を用意しており、創業融資も取り扱っています。
申し込みは、日本政策金融公庫へ直接行います。
日本政策金融公庫の一般的な創業融資制度である新規開業資金の概要は、以下の通りです。
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
金利 | 1.51%〜2.90%(令和3年4月1日現在) |
返済期間 | 設備資金:20年以内<うち据置期間2年以内>
運転資金: 7年以内<うち据置期間2年以内> |
また、対象者の条件によってさらに金利が優遇される、以下のような創業融資も用意されています。
地方自治体には、自治体内の中小企業を資金的に後押しするため、金利や融資条件が有利な「制度融資」という融資制度を用意しています。
制度融資の中には自治体内での新規開業を後押しするため、制度融資のラインナップの中に創業融資を用意している自治体も数多く存在します。
制度融資の仕組みは、以下のようになっています。
なお、地方自治体が直接融資をするわけではないので注意しましょう。
制度融資の金利等の条件は地方自治体によって異なり、例えば東京都の創業融資の概要は以下の通りです。
融資限度額 | 3,500万円 |
金利 | 1.7%〜2.5%(令和3年4月1日現在) |
返済期間 | 設備資金:10年以内<うち据置期間1年以内>
運転資金: 7年以内<うち据置期間1年以内> |
地方自治体の創業融資は、地域の金融機関(信用金庫・信用組合など)へ直接申し込みに行くことで、地方自治体や保証協会とのやりとりも金融機関が仲介して行なってくれます。
創業融資は、金利が比較的低いのが特徴です。
個人的な感覚ですが、何も実績のない事業者が資金調達できる金額は非常に少ないため、一般的によくある手法として個人向けカードローンを利用するケースも存在します。
個人向けカードローンで必要資金を借りた場合、最大14%程度の高い金利が適用されることもあります。
しかし、創業融資の場合には2%前後の低金利で資金調達することができます。
起業・開業前後の事業者が資金調達することができる融資の中では、最も低金利で借りることができる商品と言えます。
創業融資は、起業・開業前に創業のために必要な資金を調達することが基本となります。
しかし、創業後になって「当面の運転資金が足りない」という場面でも活用できます。
制度によって多少異なるものの、基本的には創業後1年以内までは創業融資を活用できますが、追加での融資は受けられません。
つまり、一度創業融資を受けた後に「お金が足りなくなったので、また創業融資して欲しい」と相談しても、追加で創業融資は受けられないので十分に注意しましょう。
創業融資には、原則的に担保や保証人は不要です。
ただし、以下の場合では保証人や担保の提供を金融機関から求められます。
ここからは、創業融資において連帯保証人や担保が必要になるケースについて詳しく解説していきます。
創業融資においては、原則的に担保は不要です。
運転資金を調達する場合などは調達額もそこまで大きくならないため、特に何も担保を提供しなくても資金調達することができます。
ただし、設備資金で調達した創業融資で土地や建物を購入する場合には、調達額もそれ相応に大きくなるため、建築・購入した不動産は担保に入れる必要があります。
創業融資において法人名義で資金調達する場合には、基本的に代表者が連帯保証人にならなければなりません。これを「代表者保証」と言います。
そのため、制度融資でも日本政策金融公庫でも、法人名義で創業融資を受ける場合には原則的に代表者保証は必須条件です。
しかし、日本政策金融公庫の新創業融資制度だけは、代表者保証を外すこともできます。
新創業融資制度を利用するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
1.対象者の要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
2.自己資金の要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方、または以下の一定の要件※に該当する方
※一定の要件
「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方)
実は、創業融資は一般的な事業融資に比べて、かなり借りやすい融資制度と言えます。
「起業・開業時には何も実績がないから借りるのは難しい」と考えている方が多いようですが、創業融資は事業計画に実現可能性があれば、非常に借りやすい融資制度なのです。
融資審査の基準については、次の段落で詳しく解説していきますが、一般的には事業計画書だけでなく、ある程度の自己資金の準備もしておくのがベストです。
ここからは、創業融資を調達するために必要な準備について詳しく解説しています。
創業融資は事業計画さえしっかりとしたものであれば、調達するのはそれほど難しくありません。
事業計画では、以下の点に留意することが重要です。
上記5点が揃った事業計画書を策定できれば、創業融資の審査に通過できる可能性が高くなります。
通常の事業資金の融資は過去の実績に対して融資を行うので、業績が悪ければ融資を受けることはできません。
しかし、創業融資は事業計画に対して融資審査を行うので、優良な事業計画さえあれば誰でも創業融資を受けることができる可能性があります。
自己資金は、やはり3割程度はあると良いでしょう。
創業融資では、自己資金がゼロでも融資審査に通過できることもあります。
しかし、ある程度は自己資金が貯まっていた方が融資審査で有利になることは間違いありません。
一般的には、事業に必要な資金の3割程度はあった方が融資審査で有利になると言われていますので、創業に必要な資金の総額の3割を目標にコツコツとお金を貯めておきましょう。
創業融資の申し込みから融資実行までの流れを解説していきます。
日本政策金融公庫と地方自治体の制度融資では一部流れが異なるので、それぞれの手続きの流れについて解説していきます。
まずは、創業計画と資金計画を立てましょう。
長期の経営理念や実現したい目標などを明確にした上で、下記の4点を数値的に明らかにしましょう。
借入希望額は、創業に必要な資金総額から自己資金を差し引いたものとなります。
起業・開業時に必要な金額とは、運転資金と設備資金の合計額です。
借入希望額=創業に必要な資金総額(運転資金+設備資金)-自己資金
なお、運転資金は通常1年程度は必要です。
創業後は事業が軌道に乗るまで時間がかかることを考慮し、ある程度長い期間の運転資金を用意しておきましょう。
創業計画・資金計画・借入希望額が決まったら、創業計画書を策定しましょう。
主に、売上・仕入・収益・資金繰りの計画を立てます。
創業計画書の策定方法につきましては、別の記事にてフォーマットとともに詳しく解説いたします。
創業計画書を持参して日本政策金融公庫を訪問し、融資担当者に相談します。
訪問の際には、創業計画書と商品・サービスのパンフレットやホームページをプリントアウトしたものなど、商品・サービスの内容が詳しくわかるものを持参しましょう。
創業融資の相談には比較的時間がかかるので、事前に予約を入れてから相談することをお勧めします。
なお、融資申し込みには必ず面談が必要となります。個人向けローンのように非対面では不可能です。
お近くの日本政策金融公庫の店舗は、日本政策金融公庫ホームページの店舗一覧から検索可能です。
創業融資の申し込みを行うと、日本政策金融公庫で融資審査を行います。
審査にかかる時間は1週間〜2週間程度で、基本的に融資審査の結果は電話で通知されます。
融資審査通過後、日本政策金融公庫と融資契約の手続きを行います。
その後、指定した金融機関の口座に融資金が振り込まれる形で融資が実行されます。
なお、融資契約手続きは郵送で行うことができるので、融資契約のためにわざわざ日本政策金融公庫へ来店する必要はありません。
一般的に日本政策金融公庫の申し込みから融資の手続きがすべて完了するまでには、3週間〜1ヶ月程度の時間がかかると考えておくと良いでしょう。
地方自治体の制度融資の申し込みから融資実行までの流れを解説します。
なお、手順の1〜3は日本政策金融公庫のケースと同じ内容となっています。
まずは、創業計画と資金計画を立てましょう。
長期の経営理念や実現したい目標などを明確にした上で、下記の4点を数値的に明らかにしましょう。
借入希望額は、創業に必要な資金総額から自己資金を差し引いたものとなります。
起業・開業時に必要な金額とは、運転資金と設備資金の合計額です。
借入希望額=創業に必要な資金総額(運転資金+設備資金)-自己資金
なお、運転資金は通常1年程度は必要です。
創業後は事業が軌道に乗るまで時間がかかることを考慮し、ある程度長い期間の運転資金を用意しておきましょう。
創業計画・資金計画・借入希望額が決まったら、創業計画書を策定しましょう。
主に、売上・仕入・収益・資金繰りの計画を立てます。
創業計画書の策定方法につきましては、別の記事にてフォーマットとともに詳しく解説いたします。
制度融資の場合、創業融資を実行するのは銀行です。
そのため、まずは最寄りの銀行(信用金庫・信用組合/地方銀行など)に相談しましょう。
基本的にはどこの銀行でも制度融資を取り扱っていますが、すでに銀行口座があるまたは取引があるなど、訪問しやすい銀行に相談するとよいでしょう。
銀行に創業計画書などを持参し相談すると、銀行が地方自治体や信用保証協会をつないでくれるので、創業融資の窓口は金融機関だけに行けば問題ありません。
銀行に創業融資の申し込みをすると、銀行が信用保証協会に保証の事前相談をあげて、地方自治体ともやりとりしてくれます。
なお、地方自治体の融資担当者とは一度経営者が面談するのが基本で、自治体の融資の窓口に行き、簡単な説明などを受けます。
信用保証協会は銀行が送付した融資関連資料から、基本的に非対面で融資審査を行なってくれます。
信用保証協会から保証審査の内諾を受け、地方自治体との面談も終了すると、銀行が融資審査を行います。
制度融資において銀行は、地方自治体の預託金の一定範囲内で融資を行い、信用保証協会の保証まで受けているためリスクはほとんどありません。
そのため、銀行での融資審査は「融資関連書類が揃っているか」などの形式的な融資審査となります。
銀行の融資審査が完了すると、融資契約の手続きを行います。
制度融資の場合、借主と以下の3者の貸主が融資契約を締結します。
これらの融資契約書はすべて銀行に備え付けられているため、すべての融資契約は銀行窓口で行うことが可能です。
わざわざ信用保証協会や自治体と個別に融資契約の手続きをする必要はないので安心してください。
融資契約の手続き完了後、当該銀行の口座に融資金が振り込まれます。
一般的に制度融資の申し込みから融資実行までには、1ヶ月〜1.5ヶ月程度の時間がかかります。
制度融資は融資審査する主体が、信用保証協会・地方自治体・銀行の3者となりますので、どうしてもある程度の時間がかかってしまいます。
創業融資とは、創業前と創業後1年以内に事業で必要な資金を融資してくれるものです。
日本政策金融公庫と地方自治体の制度融資が創業融資を取り扱っていますが、融資審査の基準はそれほど大きく変わりません。
事業計画書さえしっかりと策定できれば、創業融資を受けることはそれほど難しくありません。
融資審査で最も重要なポイントになるのは、事業計画書です。
創業融資を調達しやすい事業計画書の策定は、お金のプロである税理士などの専門家に依頼した方が確実です。
融資制度の中でも非常に借りやすい創業融資を起業・開業時に最大限調達できるかどうかは、起業後の事業の成長スピードにも関わってきます。
起業・開業をご検討中の方は、まずは税理士などに気軽に相談してみましょう。