【この記事は加筆・修正を加え、2023年3月24日に最新版に更新されました】
個人事業主やフリーランスの方は、会社員の方と違って毎年確定申告をする必要があります。
「初めての確定申告だから、わからないことばかりで不安だ」
「毎年確定申告をしているが、いつもギリギリで面倒に思っている」
このように感じている方も多くいるではないでしょうか?
しかし、何となく確定申告をするのと、計画的に節税対策をしっかりして確定申告をするのでは、年間数十万円以上の税金の違いが出てくることもあります。
そこで本記事では、個人事業主・フリーランスの税金の基礎から節税を最大限活用するための条件までわかりやすくまとめました。
頑張って稼いだお金をできる限り手元に残しておくためにも、今できる節税対策からぜひ始めてみてください。
目次
具体的な節税対策の前に、まずは個人事業主・フリーランスの方が必ず支払う所得税の計算方法を押さえておきましょう。
なぜなら、所得税の計算方法を最低限押さえておかないと、節税したらいくらぐらい税金が少なくなるのかがわからないからです。
所得税の計算方法は、以下の通りです。
一見複雑に見えるかもしれませんが、それぞれの言葉の意味を理解すればそんなに難しくはありません。
以下、1つ1つ解説していきます。
まずは、所得の算出方法からです。
所得は、事業全体の売上である収入から事業にかかる必要経費を差し引くと算出できます。
つまり、必要経費を多く計上すればするほど、所得は少なくできるということです。
経費が多くなると、結果的に税金が少なくなるのはこのためです。
「収入」と「所得」は意味がまったく違うので、混同しないようにしておきましょう。
次に、課税所得を算出します。
課税所得は、所得から所得控除を差し引くことで算出できます。
課税所得とは、税金がかかる所得という意味です。
よって、所得控除が多くなればなるほど課税所得が減るので、税金が少なくなることがわかるかと思います。
所得控除の例としては、以下のようなものが挙げられます。
この中でも節税対策として利用すべきものは、後ほど詳しく解説します。
最後に、課税所得に所得税率をかけて所得税を算出します。
税額控除がある場合は所得税額から直接控除しますが、節税対策としてすぐに行えるものは少ないので、本記事では割愛させていただきます。
大切なのは、課税所得の金額によって所得税率が異なることです。
課税所得 | 所得税率 | 控除される金額 |
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円〜330万円未満 | 10% | 9.75万円 |
330万円〜695万円未満 | 20% | 42.75万円 |
695万円〜900万円未満 | 23% | 63.6万円 |
900万円〜1,800万円未満 | 33% | 153.6万円 |
1,800万円〜4,000万円未満 | 40% | 279.6万円 |
4,000万円以上 | 45% | 479.6万円 |
参照:所得税の税率|国税庁
そのため、課税所得が10万円違うだけでも190万円と200万円では所得税率が変わるので、支払う所得税額も変わってきます。
節税をする際には、ご自身の課税所得がいくらで・所得税率が何%なのかしっかり把握しておきましょう。
それだけで1つの節税対策でどのくらい支払う所得税額が変わるのかが概算でわかるからです。
所得税の計算方法はわかりましたか?
それを踏まえて、ここからは個人事業主・フリーランスの方の節税対策を紹介していきます。
個人事業主・フリーランスの節税対策には大きく分けて3種類あります。
個人事業主・フリーランスの節税対策として真っ先に挙げられるのが、青色申告です。
青色申告とは、一定の条件を満たすことでいくつもの節税の特典が得られる制度です。
青色申告で得られる主な特典は、以下の通りです。
これら以外にも青色申告の特典はありますが、本記事では特に節税効果の高いものを紹介していきます。
青色申告をすると、青色申告特別控除として10万円か55万円、または65万円の特別控除が受けられます。
ただし、最高の65万円の特別控除を受けるためには、下記の条件をすべて満たす必要があります。
参照:青色申告特別控除|国税庁
すべての条件を満たすのは手間がかかりますが、特別控除が10万円と65万円では支払う所得税が目安として10万円ほど変わってきます。
最近は記帳や決算書を簡単に作成してくれる会計ソフトなどもあるので、導入を検討してみるのも良いでしょう。
青色申告をする際には必ず国税庁のホームページを確認しておいてください。
青色事業専従者とは、以下の条件を満たす方のことを指します。
簡単に言うと、個人事業主の仕事を手伝っている15歳以上の家族のことです。
そして、その青色事業専従者に支払った給与のことを青色事業専従者給与と言います。
個人事業主は青色申告をすることで、この青色事業専従者給与を必要経費にすることができます。
つまり、家族に事業を手伝ってもらった場合に支払う給与を経費にできるということです。
ただし、青色事業専従者給与として認められるためにもいくつかの条件があるので注意してください。
条件が複数あり、面倒に感じられるかもしれません。
しかし、うまく利用することができれば、家計にたくさんのお金を残すことが可能です。
家族に事業を手伝ってもらっている個人事業主の方は、ぜひとも利用したい節税対策です。
青色申告の特典3つ目は、純損失の繰越しと繰り戻しができることです。
青色申告者は、事業で損失が出た際に3年間にわたって損失を繰り越すことができます。これを「純損失の繰越し」と言います。
純損失の繰越しを利用することで、利益が出た年の所得金額を減らすことができます。
また、前年も青色申告をしている場合は、損失額を前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることもできます。これを「純損失の繰り戻し」と言います。
参照:青色申告制度|国税庁
事業を営んでいれば、黒字の年もあれば赤字の年もあります。
純損失の繰越しと繰り戻しを利用して、その年の税金だけでなく、以前や今後の税金も低く抑えましょう。
事業で使う物を購入した場合、経費にできることはすでにご存知だと思います。
しかし、代金が10万円を超える資産は減価償却する必要があり、通常一括で経費にすることはできません。
ただ、青色申告をしている方は、30万円未満の資産であれば年間で300万円まで一括で経費に計上することができます。
10万円以上30万円未満の資産を購入することは案外多いので、利益の出そうな年にまとめて購入し、経費に計上できることは節税につながります。
これらのことから、青色申告は個人事業主が1番に優先して行う節税対策と言えるでしょう。
次に、青色申告とは別の方法で経費を増やす方法を紹介していきます。
個人事業主が経費を増やして節税する方法は、以下の4つです。
個人事業主の中には、自宅で仕事をしているという方も多いのではないでしょうか。
そのような場合は、家賃や光熱費の一部を経費に計上することができます。
ただし、すべてを経費にできるわけではありません。
事業に使用している割合に応じて経費にする必要があります。
これを按分と言います。
例えば、50㎡の賃貸マンションのうち10㎡を仕事場として利用しているとします。
その場合、仕事で使用している面積の割合が20%なので、家賃の20%を経費にすることができます。家賃が10万円なら2万円です。
また、按分できるのは家賃だけではありません。
個人としても・事業としても利用している場合は、きちんと按分して経費を計上しましょう。
経費にできるものと経費にできないものの区別をしっかりとできていますか?
経費をもれなく計上することは基本中の基本ですが、意外に見落としがちなのが税金の支払いです。
実は、税金の中にも経費になるものがあります。
家賃や光熱費と同じように個人でも事業でも利用している場合は、固定資産税や自動車税も按分する必要があります。
ただ、一部であっても税金を経費にすることができれば節税につながるのは明白です。
何となく支払っている税金も経費にできないか、今一度確認してみましょう。
短期前払費用とは、まだ受けてないサービスに対して経費を前払いすることを言います。
具体的には、以下のようなものを1年分まとめて前払いし、経費を増やすことが一般的です。
もともと月払いなどで支払っていたものを年払いに変更してまとめて支払うだけなので、簡単にできます。
しかし、年払いに変更してすぐに月払いに戻してはいけません。
今後も同様に年払いで支払っていく必要があります。
そのため、毎年決まった時期にまとまったお金が必要になるので、短期前払費用を計上する場合は今後の資金繰りを必ず確認しておきましょう。
経営セーフティ共済は、取引先が倒産した際に経営難に陥ることを防ぐための制度です。
最高で毎月20万円・年間で240万円までを経費として計上しつつ、万が一の場合には無担保で貸付を受けられます。
つまり、節税効果を受けながら万が一に備えることができるということです。
12ヶ月以上加入していれば、途中で解約したとしても掛け金の80%以上の解約返戻金が受け取れます。
詳細は以下の公式ホームページでご確認ください。
最後に、所得控除を増やして節税する方法を紹介します。
所得控除をもれなく計上できていますか?
以下のような保険に入っている方は、忘れずに所得控除の申告をしましょう。
これらの保険に入っている場合は、生命保険料控除や地震保険料控除の対象になります。
それぞれ上限はありますが、多ければ数万円ほどの節税になるでしょう。
ただし、必要のない保険に新たに加入することはおすすめしません。
節税になる金額よりも支払う保険料の方が多くなってしまうことがあるからです。
節税に目がくらんで、余計なお金を払っていては本末転倒です。
現在加入している保険の中で所得控除できるものを計上しましょう。
その他の所得控除についても利用できるものがないか、国税庁のホームページで必ず確認しておいてください。
iDeCoは個人型確定拠出年金の略で、将来受け取る年金を自分で積み立てることができる制度です。
将来受け取る年金が会社員と比べて少ない個人事業主にはもってこいの制度と言えるでしょう。
iDeCoの掛け金は、全額が所得控除の対象になります。
個人事業主の掛け金の上限は毎月6.8万円(国民年金基金に加入している場合は合計で6.8万円まで)なので、最高で年間81.6万円の所得控除が受けられる計算です。
また、iDeCoの掛け金は投資信託などで自ら運用する必要がありますが、その運用益も非課税になります。
一度どのくらい税金が抑えられるか、iDeCoの公式サイトでシミュレーションしてみると良いでしょう。
ただし、iDeCoは基本的に60歳まで解約ができないなどのデメリットもあるので注意してください。
小規模企業共済とは、廃業や退職に備えて退職金を積み立てておく制度です。
退職金がない個人事業主・フリーランスのための制度とも言えます。
小規模企業共済は、掛け金を毎月1,000円から7万円まで自由に選べて、払った金額が全額所得控除になります。
先程のiDeCoと似ていますが、大きな違いは途中解約ができることです。
しかし、小規模企業共済もあまりに早く解約すると元本割れすることがあります。
加入する場合は「節税になるから」という理由だけでなく、出口まで見据えて加入しましょう。
参照:小規模企業共済|中小機構
ふるさと納税は、自分の選んだ自治体に寄附を行うことで、特産品などをもらうことができる制度です。
寄附した金額から2,000円を差し引いた金額が、翌年の住民税や当年の所得税が低くなる形で調整されます。
つまり、ふるさと納税は自己負担2,000円で特産品がもらえる制度とも言えます。
手元にお金が残るわけではありませんが、実質2,000円で2,000円以上の価値があるものが得られることもあります。
まだ利用したことがない方は、ぜひ一度利用を検討してみてください。
個人事業主・フリーランスの節税対策は、青色申告など手間のかかるものが多いのが実状です。
しかし、「面倒だから」などという理由ですぐに諦めてはいけません。
会計ソフトを導入したり、税理士に相談したりすることで十分に節税効果を得ることができるからです。
とはいえ、会計ソフトを利用したり、税理士に相談したりするには一定の費用がかかります。
ただし、かかった費用以上に節税効果が得られるのであれば使わない手はありません。
個人事業主・フリーランスの方は、法人組織と違って一人でやらなければいけないことがたくさんあります。
一人ですべての業務を抱え込むのではなく、節税対策などは他者の力を借りてみるのも良いかもしれません。