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法人の節税対策13選!表を見れば一目でわかる本当に効果のある節税

【この記事は加筆・修正を加え、2023年5月11日に最新版に更新されました】

「せっかく今期は1年間頑張って稼いできたのに、法人税をたくさん取られるのはイヤだな…」と思っていませんか?

でも、事前にきちんと節税対策をしておけば大丈夫です!
何もしない場合に比べて、年間で数百万円以上多く残せる可能性もあります。

法人の節税対策は、個人の節税対策と違って金額も大きいので、節税効果も絶大です。
「知らないから」「面倒だから」という理由であきらめてはいけません。

本記事では、流し読みをするだけでも法人の節税の概要が理解できるように、簡単な表を用いて1つずつわかりやすくまとめました。

ぜひ会社に少しでも多くのお金が残るようにお役立てください。

法人の節税対策を知っているかどうか・実際に行っているかどうかで、会社の未来の財務状況は大きく変わります。

今後の会社や経営者個人のためにも、今すぐできるものから始めていきましょう。

良い節税対策とは?

具体的な節税対策を紹介していく前に、「そもそも良い節税対策とは何なのか」ということから確認しておきます。

本記事で定める良い節税対策とは、以下のいずれかの条件を満たすものを指します。

  • お金のかからない節税対策である
  • 費用対効果の高い節税対策である

一般的に節税対策としてよく紹介されることの多かった法人保険などは、本記事では紹介しません。なぜなら、節税効果が低いからです。

そこで本記事では、本当に節税効果の高い対策だけを13個に絞って紹介していきます。

お金のかからない最優先の節税対策6選

まずは、お金を使わない節税対策から解説していきます。

  • 出張手当の支給
  • 役員報酬の最適化
  • 未払費用を計上する
  • 自家用車を社用車にする
  • 役員や社員の家を社宅にする
  • 売却損・除却損(廃棄損)・評価損を計上する

お金のかからない節税対策は、最優先に行うべきものです。
まだ取りかかっていないものがあれば、なるべく早めに始めましょう。

出張手当の支給

タイミング 早ければ早いほど良い
節税効果 出張が多い会社ほど高い
節税以外のメリット 事務処理が楽になる
受け取る時に所得税がかからない
デメリット 旅費規程を作る必要がある
注意点 相場からかけ離れた金額にしない
役職ごとに金額の差をつける必要がある

出張を未だに実費で精算していませんか?

出張が頻繁にある会社であれば、出張手当を支給することでかなりの節税効果が見込めます。
出張手当は、出張にかかった金額以上に経費を計上することができるからです。

実費精算では、実際に出張にかかった金額分しか経費にできません。
8,000円かかったのなら、旅費交通費8,000円だけです。

しかし、旅費規程さえ作成しておけば、出張にかかった金額以上に出張手当として経費にすることができます。
実際は8,000円しかかかっていなくても、旅費規程に基づいて旅費交通費1万円を支給することも可能です。

旅費規程とは、「出張手当をいくら支給するか」というルールをあらかじめ定めたものです。
相場から大きくかけ離れた金額を設定することはできませんが、旅費規程は会社内で作成するものであるため、ある程度自由に金額の設定ができます。

また、出張手当は受け取る社員側も所得税がかからないので、個人としてもメリットがあります。

きちんとした旅費規程さえ作ってしまえば、節税効果はいつからでも得られます。
出張を未だに実費で精算している場合は、今すぐ旅費規程の作成から始めましょう。

役員報酬の最適化

タイミング 年度の開始から3ヶ月以内
節税効果 非常に高い
節税以外のメリット 手取りが増える
デメリット 絶妙なバランスを取る必要がある
注意点 期の途中から変更はできない

毎期、役員報酬は適切に設定していますか?

役員報酬は、少な過ぎても・多過ぎてもいけません。
少ない場合は会社に利益が出過ぎて会社に多くの税金がかかりますし、多い場合は個人の収入が増え過ぎて個人に多くの税金がかかるからです。

では、どうすれば良いのでしょうか?

正解は、会社にかかる税金と個人にかかる税金のバランスを取りながら、役員報酬を最適な金額に設定することです。
もちろん、これは一朝一夕でできるものではありませんが、その分節税効果はかなり期待できます。

まずは、会社の利益をきちんと把握することや役員報酬のシミュレーションから始めて、会社にも・個人にもベストな金額で役員報酬を設定しましょう。

ただし、役員報酬の金額の変更は年度の開始から3ヶ月以内でなければいけません。
例えば、4月1日が期首の会社の場合は、6月の役員報酬を支給する日までに金額を変更する必要があります。

期の途中で役員報酬の金額を増やしたり・減らしたりすると、役員報酬の一部が経費として認められなくなってしまうので注意してください。

未払費用を計上する

タイミング 決算直前
節税効果 大きな会社ほど高い
デメリット 事務処理が必要
注意点 役員報酬や役員賞与は未払費用として計上できない
決算賞与を未払費用として計上するには要件がある

決算直前にできる最も効果の高い節税対策は、未払費用を計上することです。

未払費用とは今期中に発生した費用で、支払いが来期の費用のことを指します。
それを今期の決算で経費として計上することで、高い節税効果が期待できます。

未払費用として計上できるものは様々ですが、本記事では特に効果の高いものを3つ紹介します。

  • 社会保険料
  • 社員の給与
  • 決算賞与

社会保険料

月末に支払っている社会保険料は、いつの分の社会保険料かご存知ですか?

実は前月分の社会保険料です。
例えば、4月に支払う社会保険料は3月分の社会保険料です。

そのため、3月決算の会社であれば、4月に支払う社会保険料を未払費用として今期の決算で計上することができます。

これは意外と知られていない節税対策です。

社員の給与

社員の給与も未払費用として計上できます。

例えば、給与計算期間が当月16日から翌月15日で、決算が3月の会社があったとします。
この会社の場合、3月16日から3月31日までの約半月分を未払費用として今期の経費に計上できます。

来期の4月1日から4月15日までの給与はもちろん計上できませんが、それでも全社員の約半月分の給与が経費として計上できるので、規模の大きな会社ほど節税効果に期待できます。

ただし、対象となるのは社員の給与のみで、役員報酬は未払費用として計上できません。

決算賞与

給与と同じように、社員の賞与も要件を満たせば今期の経費として認められます。
要件は以下の通りです。

  • 賞与の支給額を確定し、賞与明細書を用意する
  • 決算から1ヶ月以内に賞与の支給を行う
  • 支給した後、従業員に確認の書類を書いてもらう

もともと支払うつもりの賞与であれば、プラスでお金がかかるわけではありません。
今期の利益が大きい場合は、今期の未払費用を増やして節税しましょう。

役員報酬と同じように、役員の賞与は対象外です。

自家用車を社用車にする

タイミング いつでも
節税効果 利用頻度が高いほど高い
節税以外のメリット 車代・ガソリン代・高速代・自動車保険料も経費にできる
デメリット 自動車保険料が高くなることがある

車を持っている人は、自家用車を社用車として登録することで節税効果が期待できます。

以下のようなものを会社の経費にすることができるからです。

  • 車の取得費用
  • ガソリン代
  • 高速代
  • 自動車保険料

車の利用頻度が高い人ほど、高い節税効果が期待できます。

ただ法人契約にすると、場合によっては自動車保険料が高くなることがあります。
それでも、社用車にするメリットの方が大きいケースがほとんどです。

役員や社員の家を社宅にする

タイミング いつでも
節税効果 家賃の約50%を経費にできる
節税以外のメリット 社員の手取りが増える
注意点 会社で契約を結ぶ必要がある
約50%を借主が負担しなければいけない

役員の家や社員の家を会社で借りて、社宅にすることで節税ができます。

役員の家の場合は、家賃を経費で計上することで法人としての利益を一部減らすことができるからです。

従業員の家も家賃を会社で負担してもらう場合は、給与ではなく住宅手当として支給されるので手取りが増えます。
この場合の住宅手当は課税されないからです。

例えば、もともとの額面の金額が30万円だったとしても、そのうちの5万円が住宅手当になれば課税される金額が5万円減るので、結果的に手取りが増えるというようなイメージです。

非常に便利な社宅制度ですが、家賃の全額を会社で負担することはできません。
役員や社員自身で50%ほどは家賃を自己負担するようにしましょう。

売却損・除却損(廃棄損)・評価損を計上する

タイミング いつでも
節税効果 固定資産や在庫が多いほど高い
デメリット きちんと資料を用意する必要がある
注意点 税務調査が入る可能性がある

不要な固定資産や売れ残った在庫をそのまま多く抱えていませんか?

そのような場合でも、これから紹介する3つの方法で節税ができます。

これらは不要な固定資産や在庫が多ければ多いほど節税効果に期待できますが、資料を用意して損をしたことを証明することが必要です。
また、税務調査が入ることもあるので、しっかりと準備をしましょう。

売却損

不要な固定資産や売れ残った在庫を原価よりも安い値段で売ることで生じる売却損を、経費として計上することができます。

例えば、100万円で仕入れた商品を80万円で売った場合は、20万円が売却損になります。

除却損(廃棄損)

売ることもままならない固定資産や在庫は、除却(廃棄)をすることで除却損(廃棄損)として経費にできます。

100万円の商品であれば、100万円が除却損(廃棄損)です。

評価損

評価損とは、現在所有している資産の価値が通常の価格よりも安くなって損をすることです。
評価損の状態であることが証明できれば、値下がりした金額を経費として計上できます。

例えば、もともと100万円の在庫の価格が70万円になった場合、30万円を経費にすることができます。

評価損などは簡単そうな節税対策に思われるかもしれませんが、資産の価値が下がったことを客観的に証明できなければ認められません。
写真を撮るなどして証拠をしっかり残しておきましょう。

お金はかかるが効果の高い節税対策7選

ここまでは、お金のかからない節税対策を紹介してきました。
お金のかからない節税対策は、何よりも最優先して行うものです。

しかし、「お金のかからない節税対策はもうやっている」「うちには関係ない節税対策ばかりだ」という方もいるでしょう。

そこで、ここからは一時的にお金を使うことにはなりますが、本当に効果の高い節税対策を7個に厳選して紹介していきます。

  • 短期前払費用を計上する
  • 経営セーフティ共済に加入する
  • 健康診断を制度化する
  • 社員旅行に行く
  • 資格取得を奨励する
  • 中古資産を減価償却する
  • 中小企業投資促進税制を利用する

ただ、ぜひ注意していただきたいのは、本当に会社に必要なもの以外には絶対にお金を使わないようにするということです。

当たり前のように思われるかもしれませんが、節税に気を取られるあまり不要なお金を使う経営者は世の中にたくさんいます。
「我が社に本当に必要なものなのか?」と、もう一度自分の胸に聞いてからお金を使うようにしましょう。

短期前払費用を計上する

タイミング いつでも
節税効果 支払うお金が多ければ多いほど高い
デメリット まとまったお金が必要
注意点 年払いを今後も継続する必要がある

短期前払費用とは、まだ受けてないサービスに対して前払いする経費のことを言います。
具体的には、以下のようなものを1年分前払いし、経費を増やして節税することが一般的です。

  • 家賃
  • 借入金利息
  • 生命保険料
  • 消耗品費
  • サーバー代

もともと月払いなどで支払っていたものを年払いに変更してまとめて払うだけなので、手続きも簡単です。

ただ、年払いに変更してすぐに来期から月払いに戻してはいけません。
今後も同様に年払いで支払っていく必要があります。

そのため、毎年決まった時期にまとまったお金が必要になるので、短期前払費用を計上する場合は今後のことも考えておいてください。
もちろん、不要な契約を新たに結んだりしてはいけません。

経営セーフティ共済に加入する

タイミング いつでも
節税効果 年間最大240万円
節税以外のメリット 取引先が倒産したら無担保・無利子で貸付が受けられる
資金が必要な時に無担保・低利率で貸付が受けられる
デメリット 解約のタイミングを調整する必要がある
注意点 12ヶ月以上加入しないと解約返戻金が0になる

もし今の取引先が倒産したとしても、会社の資金繰りに問題は出ませんか?

取引先の倒産により、自分の会社まで倒産してしまうことを「連鎖倒産」と言います。今の時代、「連鎖倒産」はどんな会社でも起こりうる可能性があります。
特に、資金力の低い中小企業にとっては他人事ではありません。

経営セーフティ共済なら、年間240万円まで経費として計上しつつ、取引先が倒産した際にはお金を借りることができます。
つまり、節税効果を受けながら、もしもの時に備えられるということです。

さらに、取引先が倒産した時は無担保・無利子で貸付を受けられるだけでなく、急に資金が必要になった時にも無担保・低利率で貸付を受けられるのも特徴です。

12ヶ月以上加入していれば、解約したとしても掛け金の80%以上の解約返戻金が受け取れます。
解約による縛りも少ないため、とりあえず中小企業は入っておいて損はない共済と言えるでしょう。

詳細は以下の公式ホームページでご確認ください。

参考:中小機構|経営セーフティ共済

健康診断を制度化する

タイミング いつでも
節税効果 健康診断を受ける社員が多ければ多いほど高い
節税以外のメリット 福利厚生の充実
デメリット 費用は会社ですべて負担しなければいけない
注意点 全社員を対象にする必要がある

健康診断を制度化していない会社は、健康診断を制度化することで節税ができます。
健康診断の費用を福利厚生費として経費にできるからです。

ただ、健康診断にかかった費用は会社ですべて負担しなければいけないので、場合によってはかなり高額になることがあるので気をつけてください。

お金に余裕がある場合は、会社の福利厚生を充実させるためにも・節税のためにも、健康診断を制度化してみてはいかがでしょうか。

社員旅行に行く

タイミング いつでも
節税効果 社員旅行に行く社員が多ければ多いほど高い
節税以外のメリット 福利厚生の充実
デメリット 場合によってはかなり高額になる
注意点 4泊5日以内でなければいけない
社員の50%以上が旅行に参加しなければいけない

社員旅行でも節税ができます。
健康診断と同じように、福利厚生費として計上できるからです。

ただし、以下の条件を満たさないと給与とみなされることがあります。

  • 4泊5日以内であること
  • 社員の50%以上が参加していること
  • 1人当たりの費用が10万円以下であること(目安)

社員を労いたい時は、社員旅行も節税の1つの手段として検討してみてください。

資格取得を奨励する

タイミング いつでも
節税効果 資格による
節税以外のメリット 福利厚生の充実
会社の業績向上
注意点 会社に必要な資格でなければならない

会社の業務に直結するような資格で社員におすすめの資格はありませんか?

会社にとって本当に必要な資格であれば、資格を取るためにかかった費用や受験料を経費に計上できます。

ただし、運転免許や語学に関する資格など、どこの会社でも使えるような一般的な資格を取得する場合は経費として認められません。

会社の業績向上や社員のモチベーション維持のためにも資格取得を奨励してみましょう。

中古資産を減価償却する

タイミング 早い方が良い
節税効果 減価償却期間が短いほど高い
高額になればなるほど高い
節税以外のメリット 資産が手に入る
デメリット 高額になることが多い
新品ではない
注意点 決算までの月数分しか経費にならない
不要なものを買わない

社用車や大型の機械を買う予定はありませんか?

もし買う予定がある場合は、中古品の購入を検討してみてください。
中古資産は減価償却の期間が短いので、節税につながるからです。

車や機械などの取得にかかる費用は高額なため、一度に経費にすることができません。
そこで国が定めた期間をかけて費用を計上していきます。これを減価償却と呼びます。

例えば、新車の普通車であれば、取得にかかった費用を6年かけて減価償却していきます。
300万円の新車であれば、1年目は約100万円を経費にできます。

しかし、4年落ちの中古の普通車を買った場合は、1年で取得費用のすべてを経費にできます。
300万円の中古車であれば、300万円すべてを経費にできるということです。

もちろん、不要なものを買っては意味がありませんが、うまく利用することができればかなりの節税に期待ができます。

しかし、資産を取得した年は年単位で経費にすることができないので注意が必要です。
経費にすることができるのは、購入した月から決算までの月数分になります。

そのため、早く購入すればするほど節税効果が高くなるので、本当に必要なものであれば早く購入するのが良いでしょう。

中小企業投資促進税制を使う

タイミング いつでも
節税効果 高額になればなるほど高い
節税以外のメリット 資産が手に入る
デメリット 高額になることが多い
注意点 条件に当てはまるか確認する必要がある
不要なものを買わない

先ほどは、中古の固定資産を買うと大きな節税になるということをお話しました。
では、新品の固定資産では大きな節税にならないのでしょうか?

実はある制度を使えば、新品の固定資産でも大きな節税効果が得られます。
それは、中小企業投資促進税制という制度です。

中小企業投資促進税制とは、中小企業に対して設備投資などを促進するためにつくられた制度です。

中小企業投資促進制度を使えば、新品の固定資産の取得費用の30%を特別償却という形で経費にしたり、取得費用の7%を法人税から直接控除する税額控除が受けられます。

中小企業投資促進制度を使う場合は、対象者・対象業種・対象設備などを必ず確認してから使うようにしましょう。

参考:中小企業庁|中小企業投資促進税制

お金のかからない節税対策から始めてみよう

本記事では、本当に効果のある法人の節税対策を厳選して13個紹介してきました。
会社で取り入れられそうな節税対策は見つかりましたか?

節税対策をきちんと行っているかどうかで、会社の未来の財務状況は大きく変わってきます。
まずは、今回紹介した節税対策の中でもお金のかからない節税から早速始めてみてはいかがでしょうか。

お金のかかる節税でも良いですが、無駄な支出をしてしまっては本末転倒です。
「何のために節税をするのか?」をもう一度良く考えてからお金を使いましょう。

「ちょっと1人では難しそう」「何から始めればベストなのかわからない」という方は、ぜひ税理士に相談してみてください。
きっと今後の会社や経営者の力になってくれるはずです。

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