「税理士を変更したいが初めのことで、どのように変更していけば良いのかわからない」
「できるだけ現在の税理士と角を立てずに税理士を変更したい」
「税理士を変更すると何か悪いことがあるのか」
このような疑問や不安をお持ちの経営者の方も多いのではないでしょうか。
確かに、ビジネスに関するすべての数字を把握している税理士を変更する時は大きな不安があることでしょう。
そこで本記事では、税理士事務所を経営する代表者である私が、お客様(経営者)の視点に立ち、税理士変更をスムーズに進めるためのポイントをご紹介いたします。
本記事で紹介する次のような内容を理解し・実践していただければ、スムーズに税理士変更を進められることでしょう。
税理士変更に大きな不安をお持ちの経営者の方は、是非ご参考にしてください。
目次
税理士を変更したいと考える経営者は少なくありません。
そこでまず、税理士を変更するべき理由について典型的なものをご紹介します。
税理士を変更することで、以下で紹介する不満等をなくすことができるはずです。
ご自身の状況に当てはまるものはないか、確認していきましょう。
せっかく税理士と契約したとしても、税理士の業務の品質に不満が出てしまうこともあります。
具体的には次のようなものです。
税理士との相性が合わないなど、コミュニケーションが原因で税理士を変更したいと考える経営者もいらっしゃいます。
税理士は中小零細企業にとって、最も身近な唯一の信頼できる経営パートナーであるべきですから、以下のようなものがあれば税理士を変更すべき大きな理由になります。
これまでに紹介した「税理士のスキル・業務品質」または「相性やコミュニケーション」が、税理士を変更すべき大きな理由です。
しかしこれだけではなく、次のようなものも税理士を変更すべき理由になります。
依頼していた担当者がすぐに変わってしまえば長期的な関係を築きにくいですし、税理士への報酬が依頼内容に対して高いと感じる時もあるでしょう。
このような場合でも、税理士変更を考える1つの理由となりえます。
税理士を変更したいと考えても、現在顧問契約している税理士に対して、どのように契約を断れば良いか悩む経営者も多いです。
もし断る時の理由が微妙であれば、後味も悪く、角が立ってしまうと考えていることでしょう。
また後述しますが、場合によっては解約時の税理士からの書類回収が滞ってしまうリスクもあります。
そこで、税理士変更の連絡で無難に変更理由を伝えるコツをご紹介いたします。
結論としては、次のような断り方がおすすめです。
このように伝えれば、税理士側も「それなら仕方ないな…」と考えるほかありません。
税理士業界では「知人や親戚が税理士事務所を開業した」という理由は、解約時の常套句(決まり文句)として知られています。
これらは角が立たない変更理由であり、新しい税理士への引き継ぎもスムーズにいくことでしょう。
是非ご参考にしてください。
そもそも税理士の変更自体は、書類の回収や新しい税理士への引き継ぎをするだけで、一部の場合を除き、難しいことではありません。
しかし、手順を間違ったり注意点を押さえておかなかったりすると、スムーズな税理士変更ができず困ってしまう場合があります。
そこで、税理士変更の手続きを困らずスムーズに進める手順を、注意点とあわせてご紹介していきます。
簡単にまとめると次のとおりです。
税理士を変更したいと思ったら、まず税理士との顧問契約書などを確認しましょう。
税理士との顧問契約における契約書では、「契約期間の3ヶ月前までに申し出がない場合、契約を自動更新する」などの条項が盛り込まれている場合もあるからです。
つまり、「事前の契約解除通知」の期限を過ぎていれば契約は自動更新となり、スムーズに契約を解除できない場合があります。
場合によっては、半年前までに契約解除の意思を通知しなければならないこともあるため、注意が必要です。
ただし、これは税理士との顧問契約に限った話ではありません。
一般的な契約書においても、契約の種類によってはこのような内容が盛り込まれています。
現在の税理士に解約したい旨を連絡してから、新しい税理士を探すのは危険です。
なぜなら、新しい税理士がすぐに決まるとは限らないからです。
つまり、税理士との解約の前に新しい税理士と顧問契約する目処をつけておかなければ困ってしまうのです。
極端な例ですが、税理士がいない期間に税務調査の事前通知が来ると大変困るでしょう。
そのため、現在の税理士との契約解除について確認したら、解約の連絡をする前に新しい税理士を探し始めることが重要です。
実際に変更後の税理士を探す方法や失敗しないための選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
是非あわせてご参考にしてみてください。
関連記事:【税理士が教える】安心できる理想の税理士を探す方法
関連記事:税理士が教える税理士の選び方。失敗しない12のチェックリスト
変更後の新しい税理士に目処がついたら、解約したい旨を現在の税理士に連絡しましょう。
先ほども紹介したように、契約内容によっては契約解除を通知する期間に余裕がない場合もありますので、新しい税理士を探すのも急がないといけないかもしれません。
また、現在の税理士に解約の連絡をする時は、前述のとおり「友人(または親戚)が税理士として開業した」を理由にすると角が立ちません。
現在の税理士と解約の話が進んできたら、その税理士に預けた書類やデータを回収する作業に移ります。
実は、この回収ステップが税理士変更をスムーズに進めるための重要なポイントです。
税理士によっては、契約解除を良く思わず、スムーズに書類やデータを回収できないことがあるようです。
そのため、経営者としては解約するにしても丁寧に連絡することが望まれます。
契約内容にもよりますが、回収する具体的なものは次のとおりです。
最後の「e-Tax情報」について補足します。
e-Tax(国税電子申告システム)においては、次のようなことに気をつけなければなりません。
詳しくは日本税理士会連合会「9章 電子申告Q&A-その他」をご参照ください。
前ステップの書類回収がスムーズにできれば、引き継ぎは問題ありません。契約内容に応じて、必要な書類やデータを提出しましょう。
先ほど紹介したステップにならって税理士変更の手続きを進めることをおすすめしますが、時期・タイミングは考慮しなければなりません。
具体的には、税理士が忙しい時期である11月から5月は避けたいところです。
例えば、税理士が忙しくなる2月や3月に解約・契約の連絡をしてしまうと、税理士が忙しく、レスポンスがどうしても遅くなってしまうことがあります。
つまり、税理士変更の手続きがスムーズに進まない可能性があるのです。
ちなみに、一般的には所得税・法人税の申告時期と年末調整の時期が税理士の繁忙期です。
業務 | 時期 |
---|---|
個人所得税の申告 | 2月16日~3月15日 |
法人税の申告 | 決算期末から2ヶ月以内 ※3月なら5月程度 ※9月なら11月程度 ※12月なら2月程度 |
年末調整 | 1月末までが期限 |
上表をまとめると、税理士の繁忙期は11月から5月までが1つの目安と言えるでしょう。
また、法人税の申告書を提出した直後もおすすめです。
法人税の申告書を提出し終えると、ある程度は税理士に依頼している業務は1つの区切りとなります。
さらに法人税申告直後であれば、次の法人税申告まで1年の余裕ができるのも大きい理由です。
税理士変更のデメリットについて気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言えば、税理士を変更すること自体のリスクやデメリットは大きくありません。
もし税理士を変更したい理由が、現在の税理士に対する不満であるのならば、税理士を変更して不満が解消されるメリットの方が大きくなるでしょう。
とは言え、場合によっては税理士変更で起こり得るリスクやデメリットもあります。
これまでは長い付き合いでわざわざ話をせずともやってくれた内容が、新しい税理士ではスムーズにできないことがあるかもしれません。
また、信頼関係をまた最初から構築しなければなりません。
確かにこれもデメリットとしてはありますが、良い税理士を選べば親身に寄り添って対応してくれるはずです。
税理士とのコミュニケーションが活発であれば、時間を経て、今まで以上にスムーズで質の高い対応が期待できるでしょう。
今までの税理士に不満があるから税理士を変更したものの、税理士の選び方に失敗してしまうと、結局不満が解消しない可能性もあります。
そのため、余裕を持って税理士変更を進めていく必要があるでしょう。
失敗しない税理士の選び方を知りたい方は、ぜひ以下の記事もあわせてご参照ください。
関連記事:税理士が教える税理士の選び方。失敗しない12のチェックリスト
税理士を変更すると税務調査が来やすいと考えている方も少なくないようです。
しかし結論から言うと、税理士変更と税務調査の来やすさには直接的な因果関係はありません。
理由は単純で、税務調査の来やすさに「税理士が誰なのかは関係ない」からです。
あくまでも申告しているのは事業主であり、納税するのも当然ながら事業主です。
ただ、税理士によっては経費計上に積極的なスタイルだったり、勘定科目が変更されたりする可能性もあります。
この場合は、これまでの申告書の内容と差異が出てきますので、税務調査が来る要因の1つになることもあるでしょう。
とは言っても、税理士の「変更」によって税務調査が来やすくなることはありません。