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普段からお金のことにルーズな人はもちろん、普段はお金のことをきっちり対応していた人であっても、突然のアクシデントなどによって、給料日前なのにお金が足りなくなってしまうことは十分にあり得ます。
特に2020年前半は、世界中で新型コロナウイルス感染症が流行したため、予期しない休業や業績低下に見舞われた会社も多かった状況です。
そのため、そこで働く人も「いきなりお金が足りなくなる」というリスクにさらされたのです。
ここで「お金が足りない状態で、給料日までどうやってしのぐか」が問題になります。
「節約に励む」「家族や友だちに借りる」などの一般的な手段のほかに検討する人がいてもおかしくないのが、「会社から給料を前借りする」ことです。
つまり、「一度給料を前借りして、あとで働くので何とかしてほしい」と頼むことですが、法律違反になるため会社側からは絶対に応じないようにしましょう。
労働基準法では、強制労働を禁止しています。(第5条)
会社から給料を前借りするということは、会社側に「前借りした分の返済が終わるまでは、会社は辞めさせない」という主張ができるチャンスを与えてしまいます。
つまり、従業員側が圧倒的に不利な立場に追い込まれるため、将来支払う給料を前借り分から差し引くのを原則的に禁止しているのです。
そうはいっても急病や災害・結婚や出産など、まとまったお金を確保すべき相応の理由がある場合は、会社側は従業員に対して給料日前だったとしても、給料の前払いに応じるよう労働基準法には定められています。(第25条)
もちろん「買い物をしすぎた」「ギャンブルで大損をした」など、従業員の個人的な事情は、前払いに応じる理由にはなりません。
「どのような理由であれば前払いを行うのか」「前払いを請求する場合の流れ」などを明文化し、社内に周知しておくといいでしょう。
資金力が少ない中小企業では、退職金の制度自体がないことも多いです。
しかし、従業員の側からすればちょっとした金額でも退職金があればうれしいのは事実でしょう。
また、経営者の側も「長年頑張ってくれた人には、気持ち程度でも退職金をあげたい」と思うかもしれません。
そこで、活用してほしい制度として中小企業退職金共済制度があります。
略称の「中退共」で呼ばれることが多いです。
これは簡単にいうと、経営者が毎月掛金を払い込むことで、従業員が退職する時にまとまったお金を受け取ることができる制度です。
掛金は、事業主が全額負担する必要があります。
そして、従業員が退職した際は、事業主(会社)からではなく、中退共本部から直接退職金が支払われる仕組みです。
退職金は原則として一括払いですが、退職日の年齢が60歳以上で、その他の条件を満たすなら、分割払いを選択することもできます。
中退共の特徴の1つとして、掛金の一部について国・地方自治体からの助成が受けられることがあります。
最初に、国が行っている助成制度として新規加入助成と月額変更助成について解説しましょう。
まず、新規加入助成とは、初めて中退共に加入する事業主に対するものです。
加入後4か月目から1年間は、加入している従業員の掛金月額の1/2(1人あたり上限が5,000円)が受けられます。
また、月額変更助成とは、18,000円以下の掛金月額を増額する場合に受けられるものです。
増額した月から1年間は、増額分の1/3について助成が受けられます。
そして、国からの助成に加え、一部の自治体では独自に助成制度を設けているので事前に確認してみましょう。
ただし、中退共に加入できる事業者については、業種ごとに規模の上限が定められているので注意が必要です。
なお、中退共に加入したい場合には、中小企業と業務委託契約を結んでいる団体、金融機関の窓口または税理士・会計事務所などで手続きを行うことができます。
顧問契約している税理士・会計事務所があるなら、一度担当者などに聞いてみましょう。
日本国内に住んでいる場合、一部の例外にあてはまらない限りは住民税を支払わなくてはいけません。
住民税の支払い方法には、普通徴収と特別徴収があります。
簡単に説明すると、自分で払込票を使って支払うのが普通徴収・勤務先の給料から天引きしてもらうのが特別徴収です。
特別徴収には支払い忘れが防げるというメリットがあるため、会社に勤めている人に対しては、特別徴収を原則とするのが主流になっています。
なお、住民税の金額を確定する手続きとして、毎年1月に従業員(正社員・アルバイト・パート含む)の居住地である自治体に給与支払報告書を送ることが求められています。
つまり、東京都世田谷区にある会社に勤務している人であっても、住所が目黒区なら、目黒区の担当部署に給与支払報告書を送らないといけないのです。
ここで、万が一、会社が給与支払報告書を送り忘れてしまうと、何が起こるのか考えてみましょう。
まず、会社に対しては1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
法律(地方税法第317条第6項「給与支払報告書等の提出義務」)で提出を怠ってはいけないと決められているためです。
つまり、罰金を払わされるか・刑務所に行くかという事態にまで発展します。
また、従業員に対しても、本来支払うべき住民税を支払っていなかったということで、ペナルティが課せられます。
延滞した期間に応じた延滞金を従業員自らが払わなくてはいけません。
手続きを忘れたのは会社のせいだったとしても、あくまで納税義務者は従業員であるためです。
以上をまとめると、取引先からの信頼を失う上に、従業員の恨みを買うという結果になります。
従業員を初めて雇うとなるとやらなくてはいけないことが多いので、手続きの抜け漏れも生じるかもしれません。
だからこそ、税理士などの専門家と連携を取り、慎重に進めていきましょう。