中小零細企業の経営者にとって1つの課題になるのが、いかにして合法的に節税を行うかということです。
納税は国民の義務ではあるものの、できるだけ会社から出て行くお金を減らしたいという気持ちもあるからです。
そこで今回は、やっていい節税とやってはいけない節税について解説したいと思います。
目次
税金を安くしたい気持ちはわかりますが…
まずは、おすすめできない節税方法について触れておきたいと思います。
例えば、取得価格が20万円未満の固定資産であれば、3年で均等償却できるという決まりがあります。
この決まりなどを利用して、今後会社で必要そうなものを計画的に購入することは何の問題もありません。
しかし、決算近くになってから節税をしたいという理由だけで、駆け込み需要的に本来必要がないものまで購入してしまうのは、あまりおすすめできません。
確かに多少の節税はできますが、固定資産を購入する分、キャッシュ(お金)は確実に出て行きます。
あまりやり過ぎると、資金繰りに悪影響を及ぼす恐れがあるので注意が必要です。
また、社員や役員の私費(個人的な支出)を会社の経費として計上するのは、絶対にやってはいけません。
あくまで経費として認められるのは、会社が売上を生み出す上で合理的な関係があると認められる支出だけです。
「ちょっとくらいならバレないでしょ」と思うかもしれません。
しかし、税務調査が入ったら確実に矛盾点を指摘されると考えておいた方がいいでしょう。危ない橋は渡らないのが一番です。
数年前に、とある都道府県の知事が公費を私的な用事のために流用していたことが原因で辞任に追い込まれました。
民間企業でいうと、さしずめ「経営者が個人的な支出を経費にしていた」ようなものです。
なぜこれがダメなのか考えてみましょう。
結論から先に言うと、以下の3つです。
①税務調査で指摘される
②金融機関からの融資が受けられなくなる
③従業員からの信頼を失くす
まず、①税務調査で指摘されるについてですが、経営者の個人的な支出を経費にするとその分利益が減るため、最終的に支払う税金も減ります。
税金を減らす意図があって個人的な支出を経費にするとは限りませんが、税務調査が行われた場合、指摘を受けるポイントになるので注意しましょう。
金額次第では多額の税金を追加で支払わなくてはいけなくなるので、油断大敵です。
次に、②金融機関からの融資が受けられなくなる、③従業員からの信頼を失くすについて考えてみましょう。
本来、会社(事業)の経費にしていいのは「仕事に直接関係があるもの」だけです。
経営者が取引先の人と食事をしたら、打合せも兼ねている部分もあるので、経費にできる可能性は高いでしょう。
しかし、家族や学生時代の友達と食事をした時の費用まで経費にしたら、それが打合せといえるのか疑問です。
経営者であれば、当然このあたりの線引きをきっちりできるモラルが求められます。
金融機関に融資を申込む際、審査担当者は会社(事業)の業績はもちろん、経営者の人柄も案外見ているものです。
経営者に相応のモラルがないという理由で、融資審査を通さないことも十分に考えられます。
また、従業員の立場からしても「会社のお金を使い込む人の下で働くのは不安」という気持ちが働くのは、何も不自然ではありません。
会社の行く末を悲観し、早期退職してしまう恐れも高まります。
結局のところ、「信頼できない人と仕事はできない」と思われたら負けです。
経費の私的流用も含めて、信頼を損なう行為は慎みましょう。
まず、是非試してほしい節税方法の一つが、固定資産の除却です。
つまり、会社の中に使っていない固定資産があった場合は、下取りに出して処分するなどして、除却損を発生させることが考えられます。
除却損が発生した場合、これは経費の一部として損金計上できます。
平成26(2014)年度税制改正で、交際費等の損金不算入制度が設けられました。
これは簡単に言うと、社内飲食費を除いた交際費に含まれる「飲食費」について、定められた項目を記載した帳簿上の飲食費(「接待飲食費」と仕訳したもの)であれば、その額の50%を損金に算入できるという制度のことです。
言い換えれば、飲食費の残りの50%や飲食費以外の交際費は損金に算入できないため、「損金不算入制度」という名前になっています。
また、同じ飲食代であっても1名あたり5,000円以下であれば、「会議費」として損金に算入することが可能です。
本来、交際費の損金不算入制度は、時限立法(期間限定)の制度でした。
しかし、幾度となく適用期限の延長を繰り返し、令和2(2020)年度税制改正では、適用期限を令和4(2022)年3月31日までさらに延長することが発表されています。
ただし、資本金100億円以上の大企業については、適用対象外となっています。
なお、中小企業においては、交際費のうち年間800万円までを損金に算入する方法も選べます。
どちらの方法で計算するにしても、「どんな支出が交際費になるのか」を改めて再確認してみましょう。
ここでは「ちょっと意外なもの」を紹介します。
(1)取引先との食事に向かう時のタクシー代
取引先との食事(接待)の時に、レストランに支払う飲食代はもちろん交際費になります。
しかし、接待する側がレストランに向かう時にタクシーを使ったら、そのタクシー代も「接待をするための費用」であるため、交際費になるのです。
なお、接待される側が出したタクシー代は、交通費となります。
「接待を受けるための費用」は交際費とはならないからです。
(2)お中元・お歳暮の送料
お中元・お歳暮として送る商品そのものの金額はもちろん、送料も交際費になります。
これも「接待をするための費用」だからです。
何らかの事情で商品代金と送料を別々に支払った場合は、気を付けましょう。
新型コロナウイルス感染症の流行により、現状では長距離移動を伴う出張は難しいかもしれません。
しかし、今後ワクチンなどの開発が進み、効果的な対策ができるようになれば、自由に出張ができる日もそう遠くはないのかと思われます。
その前に是非取り組んでみて欲しいのが、出張旅費規程の作成です。
交通費・宿泊費・出張日当などにつき、それぞれの支給額を定めた規定を指します。
支給方法は、実費精算か定額支給等の方法を選択し、定めるのが一般的です。
出張旅費規程を作成することで、会社側にとっても従業員側にとってもメリットがもたらされます。
まず会社側にとっては、出張旅費規程に基づいて日当を支給した場合、支給額を経費として計上できるので、結果として法人税が安くなります。
なお、経費にするためには、次の条件を満たすことが必要です。
(1)その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人のすべてを通じて、適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2)その支給額が、その支給をする使用者等と同業種・同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして、相当と認められるものであるかどうか。
また、日当を受け取った従業員にとっても、所得税の非課税対象となるので、税金の支払いを増やすことなく、手取りも増えるという効果がもたらされます。
さらに、交通費・宿泊費・出張日当の額を固定してしまい、社員から出張の申請があった場合は、その固定額を支給するようにすれば、経費精算の手間も大幅に削減されます。
従来のように社員が持ってきた領収書を精査し、矛盾がないかどうか調べる必要もなくなるので、大幅に手間が減らせるはずです。
1つ注意点があるとすれば、出張旅費規程を作成した場合、出張旅費は従業員全員に対して支給するようにしないといけません。
会社での職位に応じて支給する・しないなど、不平等な扱いをすることは許されないので気をつけてください。
2020年初頭から世界的に新型コロナウイルス感染症が流行したことは、日本経済にも大きな打撃を及ぼしました。
民間調査会社の東京商工リサーチがまとめたところによれば、2020年上半期(1~6月)の全国企業倒産件数は4,001件にものぼっています。
【参照】東京商工リサーチ:2020年上半期(1-6月)の全国企業倒産4,001件
上半期だけに限って言えば、11年ぶりの増加とのことです。
2020年下半期の数字はまだ出ていませんが、倒産件数はかなり増えることが予想されます。
そうなると、経営者は「自分の会社だけでなく、取引先が潰れるリスク」も考えなくてはいけません。
そのような場合の備えの1つとして、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)があります。
簡単に概要を説明すると、毎月掛金を拠出していくと取引先が倒産したなど一定の事由に当てはまる際に、掛金の最高10倍までの借入ができます。
なお、掛金は毎月5,000円から20万円(5,000円単位)で自由に選択でき、合計800万円に達するまで積み立てることが可能です。
経営セーフティ共済などの共済に加入し、掛金を支払うことも節税策として有効です。
掛金が毎月損金として計上できるので、結果として節税になります。
その他のメリットとしては、以下の点などがあります。
しかし、注意点として「借り入れができるケースとそうでないケースがある」ことは覚えておきましょう。
借り入れができるケースとしては、以下のものが考えられます。
一方、いわゆる夜逃げの場合は、借り入れができない点に注意が必要です。
なお、経営セーフティ共済に加入したい場合には、中小企業と業務委託契約を結んでいる団体、金融機関の窓口または税理士・会計事務所などで手続きを行うことができます。
顧問契約している税理士・会計事務所があるなら、一度担当者などに聞いてみましょう。