「株式会社を設立したい!」と思っても、実際に設立するまでの流れはなかなか理解しにくいものです。
そこで本記事では、株式会社を設立する流れ・手順についてわかりやすく紹介します。
2021年2月15日から変わった手続きについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。(印鑑の提出が任意・公的個人認証サービスの電子証明書が利用可能)
目次
株式会社を設立する流れ・手順は、次の通りです。
大まかには、定款を作成して認証を受け、その後法務局で設立登記の申請をするといった流れになります。
ただし、実際には会社設立してからも税務署や年金事務所に対する手続きがありますので、あくまでも株式会社を設立するまでの流れだということに注意してください。
定款の作成 | ①発起人を決める |
---|---|
②印鑑登録して印鑑証明書を発行する | |
③株式会社の概要を決める | |
④定款を作成する | |
定款の認証 | ⑤公証人から定款の認証を受ける |
法人設立登記の申請 | ⑥資本金の払込みをする |
⑦法人の設立登記をする | |
⑧登録免許税を納付する |
以降でそれぞれ詳しく解説していきます。
株式会社を設立するなら、まず発起人を決めなければなりません。
発起人とは、株式会社の設立手続きを進める人で、定款に記名押印・署名する人を言います。
ほとんどの方が、発起人は自分自身となるでしょう。
なお、発起人に年齢制限はありませんが、株式会社の設立登記手続きには原則として印鑑証明書が必要です。
したがって、実質的には15歳以上からになります。
また、2021年2月15日からオンライン申請では印鑑の提出が任意となりましたが、オンライン申請には電子証明書が必要です。
電子証明書は、原則として15歳以上からしか利用できないため、どちらにしても15歳未満は手続きを進めることができません。
署名用電子証明書は実印に相当するため、15歳未満の方については、住基カードにおける取扱いと同様に原則として発行しません。
発起人は、原則として個人の印鑑を市区町村に登録し、印鑑証明書を発行しなければなりません。
後述する定款の認証を受ける際と法務局に代表者印の印鑑届出をする際に必要だからです。
なお、発起人自らが定款に電子署名をして、テレビ電話方式によって定款の認証を受ける場合、個人の印鑑証明書は不要です。
さらに、本人のオンライン申請の場合には印鑑の提出が任意になっていますので、個人の印鑑証明書は不要です。
オンラインで代表者印(会社実印)の届出も可能で、その際にも個人の印鑑を押印する必要はありません。(電子署名の必要がある)
参照:
法務省:商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になります(令和3年2月15日から)
7-4 定款認証 | 日本公証人連合会
なお、個人の印鑑を登録する際の費用は、世田谷区・目黒区ともに、登録に100円・証明書発行に300円が必要です。
参照:印鑑登録を申請する(本人申請) | 世田谷区ホームページ
株式会社を設立するには定款を作成しなければなりません。
定款のベースとなる概要を決めていきます。
実は、株式会社の設立方法には発起設立だけでなく、募集設立というものもあります。
募集設立は発起人以外も出資して株式を引き受ける場合ですので、手続きも複雑になってしまいます。
基本的には多くの方が発起設立となるでしょう。
商号は会社の名前です。
個人事業主の屋号のようなものと考えるとわかりやすいでしょう。
基本的には常識の範囲内で自由ですが、以下2点には注意してください。
株式会社は、原則として自由に譲渡(売買)できますが、株式は会社の経営権にかかわる重要なものです。
そこで、発行した株式の譲渡を制限することができます。
具体的には、定款に「株主総会の承認を得なければならない」と記載します。
また、自由に株式を売買できる公開会社の場合、取締役会や監査役を設置しなければなりません。
こうなると手続きが非常に面倒ですので、多くの方は株式譲渡制限会社(非公開会社)を選択します。
株式の譲渡制限については後から変更できますので、特別な理由がない限り、譲渡制限を設けるようにしましょう。
少し紹介していますが、取締役会や監査役など、株式会社の機関を設計しなければなりません。
概要は以下のとおりです。
参照:会社法327条
取締役が3人以内なら、基本的には非公開会社にして株主総会と取締役(自分1人)を設置すれば良いです。
取締役が3人以上なら、取締役会と監査役などを設置しなければなりません。
資本金は1円からでも良いのですが、さすがに1円だと外部からの信頼は獲得できません。
具体的には、銀行から融資を受ける際に不利になる場合もあります。
目安として、半年分の運転資金と設備資金で決めれば良いとよく言われます。
なお、消費税や法人住民税の観点からは1,000万円が1つの区切りとなりますので、1,000万円未満で決めることをおすすめします。
1人会社なら関係ありませんが、株式は会社の経営権です。
そのため、もし複数の出資者がいる場合には、持株比率に気をつけなければなりません。
具体的には、51%以上は維持しておきましょう。
株式の譲渡制限については先ほど紹介しましたが、その他にも以下のことについて決めなければなりません。
1株あたりの金額(価額)を決めます。
一般的には、1万円もしくは5万円が多いでしょう。
発行する株式数については定款に記載しなければなりませんが、下式で自動的に求められます。
<発行株式数の計算式>
資本金(出資額)÷価額
発行可能株式総数は、発行できる株式の上限値です。
基本的には自由に設定できますが、目安としては発行株式数の5倍から10倍程度で良いでしょう。
本店所在地は、会社の住所です。
基本的にはどこでも良いのですが、株主名簿や株主総会の議事録などを備え付けておく場所となるので注意しておきましょう。
事業目的は、例えば「マーケティングソフトウェアの開発」などのことです。
実際に決める際には、同業他社の会社概要などを参考にすると良いでしょう。
ただし、定款に記載された事業目的以外の事業は認められないので、可能な限り幅広く設定しておくべきです。
株式会社を設立すると、決算や資本金の減少などを公告として情報を公開しなければなりません。
大まかには、官報でしか広告できないものは官報で、決算公告は電子公告の方法を取るのがおすすめです。
官報 | 決算公告では6万円程度 |
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日刊新聞紙 | 50万円以上 |
電子公告 | 決算公告以外は調査委託の必要があり、10万円以上 |
個人の所得税では毎年1月1日から12月31日までが法人でいう事業年度ですが、株式会社は1年以内で自由に事業年度を設定できます。
事業年度の最終日を(決算期)と呼びますが、決算期の2ヶ月後以内に申告・納税が必要です。
この点を抑えて事業年度を設定しましょう。
一般的には、3月・9月・12月を決算期に設定する方が多いです。
ただし、繁忙期と決算期はずらしておくべきです。
決算期は決算書類の作成や申告手続きに追われることになるからです。
会社の概要を決めたら、決めた概要をもとに定款を作成します。
定款には以下の3つの記載事項がありますので、事前に押さえておきましょう。
なお、定款の記載例は日本公証人連合会および法務局が準備していますので、こちらも事前に確認しておくとイメージがつきやすいかと思います。
参照:
定款等記載例 | 日本公証人連合会
商業・法人登記の申請書様式:法務局
絶対的記載事項とは、記載しないと定款そのものが無効となるものです。
絶対的記載事項を記載していない場合、公証役場で認証を受ける際に差し戻されてしまいます。
具体的には、次の項目が絶対的記載事項です。
相対的記載事項とは、定款自体は無効にならないが、その事項について効力が認められないものです。
具体的には、会社法で「定款により別段の定め」が可能となっているものを指します。
相対的記載事項はかなり多いのですが、ここでは主要なものを一部取り上げて紹介します。
相対的記載事項をすべて覚えるのは大変ですから、前述した定款の記載例をよく参考にしてください。
任意的記載事項は、自由に規則を定めることができるものです。
違法でない(強行法規に違反しない)限り有効になります。
以下は、任意的記載事項の一例です。
これらの事項は、原則として前述の記載例である程度は網羅されています。
しかし、定款は会社運営に大きな影響を及ぼす場合もあるため、事前に専門家へ相談すると良いでしょう。
定款を作成できたら、公証役場で公証人から定款の認証を受けます。
基本的な流れは次のとおりです。
管轄の公証役場を調べ、事前に定款のチェックを受けます。
管轄とは、本店所在地を管轄する公証役場です。
世田谷区の場合は、「世田谷公証役場」が管轄となります。
目黒区の場合は、「目黒公証役場」が管轄となります。
なお、もしテレビ電話方式で定款の認証を受ける場合、連絡のタイミングでその旨を伝えておきましょう。
事前チェックを受けて訂正などを終えたら、定款の認証を受ける前に押印もしくは電子署名をします。
次に、実際に定款の認証を受ける日の担当となる公証人と調整します。
定款認証の当日は、以下の書類等を持参します。
認証が終わったら、登記用の定款謄本と会社保管用の謄本を受け取りましょう。
定款の認証が終わったら、発起人全員が資本金を払込みます。
払込みは発起人の個人口座に行いますが、残高と合計した額ではなく、資本金の額を新たに払込むことが必要です。
つまり、資本金200万円で残高が100万円あったとしても、新たに200万円を払込んで、残高を300万円にしなければなりません。
払込みが終わったら、通帳のコピーをとっておきます。
なお、通帳がない場合には事前に法務局に確認しておきましょう。
いよいよ法人の設立登記に移ります。
法人の設立登記に必要な書類は、以下のとおりです。
なお、定款で定めていない場合や取締役が発起人以外にいる場合、現物出資をした場合などは、その他の書類も必要になります。
詳細は法務局のページでご確認ください。
参照:
株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立):法務局
商業・法人登記の申請書様式:法務局
書類の準備ができたら、法務局に設立登記を申請します。
申請方法には以下3つがあります。
オンライン申請の場合は電子署名が必要ですが、書面で提出する場合は実印が必要です。
ご自身に合った方法を選択してください。
登録免許税は、株式会社で最低15万円・合同会社で最低6万円です。
登録免許税の納付方法は、次のいずれかを選べます。
ただし、オンライン申請の場合は原則電子納付となります。
オンライン申請では申請書を送信して受付後に電子納付しますが、その他の方法では申請書を提出する前に法務局が指定した方法で納付する場合もあります。
事前に管轄の法務局に指示を受けるようにしましょう。
これで、株式会社設立の手続き・流れは終了です。