会社設立を検討するにあたって、事前に株式会社化のメリット・デメリットを知っておきたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、個人事業主と株式会社の違いをまとめた表をご覧いただいた上で、メリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。
事前にメリット・デメリットを押さえておけば、株式会社を設立すべきかどうかや、どのような点に気をつければ良いかが明確になります。
デメリットを抑えて株式会社設立のメリットを最大化する方法も紹介しますので、ぜひ会社設立前のご検討にお役立てください。
さっそく、個人事業主と株式会社(法人)の違いをまとめた表を確認してみてください。
項目 | 個人事業主 | 株式会社(法人) |
---|---|---|
開業・設立 | 開業届の提出 合計額:0円 |
合計額:24.2万円もしくは20.2万円 |
資金調達 | 多額の資金調達は難しく、法人よりも融資審査は不利 | 個人よりも多額の資金調達がしやすく、融資審査も有利 |
信用度 | 取引を断られることがある | 取引・人材獲得・資金調達面で有利 |
税務会計 |
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損失の繰越控除(赤字) | 青色申告で3年間 | 青色申告で10年間 |
税率 |
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※資本金の額や自治体により異なる |
消費税 | 前々年の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務がある | |
社会保険の適用 |
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利益分配 | 自由 |
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上の表で載せられなかった点も加え、株式会社設立のメリット・デメリットを具体的に解説していきます。
株式会社設立のメリットは、以下の通りです。
個人事業主でも事業資金の調達は可能ですが、株式会社では個人事業主よりも多額の資金調達がしやすいといえます。
さらに、民間銀行や日本政策金融公庫などの金融機関における融資審査において有利になります。
その理由は、次の通りです。
例えば、政府系金融機関である日本政策金融公庫は、個人事業主や小規模企業向けの融資事業「国民生活事業」と中小企業向けの融資制度「中小企業事業」があります。
国民生活事業の平均融資額は約700万円ですが、中小企業事業は約1億円となります。
国民生活事業は、個人企業や小規模企業向けの小口資金をご融資しており、ご融資額の平均は約700万円です(短期の運転資金もお取り扱いしております)。
中小企業事業は、中小企業向けの長期事業資金をご融資しており、ご融資額の平均は約1億円です(短期の運転資金はお取り扱いしておりません)。
また、個人事業主でも一部の青色申告者なら、貸借対照表および損益計算書を作成しているはずです。
しかし、融資する側からすれば、株式会社(法人)の方がプライベートと事業の区分が明確である点は評価しやすいでしょう。
一般の応募者にとっては、個人事業主よりも株式会社の方が、安定して働き続けられる印象を持ちます。
そのため、株式会社の方が人材を獲得しやすい傾向にあります。
また、経営者自身が持っているWEBサイトやハローワークでの求人掲載などでない限り、求人情報を掲載するには費用が発生します。
資金調達しやすいのも株式会社のメリットであり、求人広告の掲載費用を出す余裕がある点からも、人材獲得には株式会社の方が有利です。
株式会社は資本金を払って商業登記を行い、決算公告により貸借対照表を公開しています。
一方、個人事業主はそのような条件が一切ないため、株式会社の方が対外的な信用度は高いといえます。
大企業など一定の会社によっては、経営リスクを抑えるために取引先を法人に限定している場合もあります。
所得が高いほど株式会社の方が税率を抑えられ、結果として節税を見込めます。
例えば、課税所得1,000万円の場合は以下の通りで、法人の方が税額を抑えられます。
参照:
No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁
No.5759 法人税の税率|国税庁
ただし、実際の税額計算はこのような単純な話ではなく、以下のように多くの要素が絡んできます。
この中でも、株式会社設立による消費税の2年間免税および経費(損金)として認められる範囲が広い点は大きなポイントです。
株式会社はプライベートと事業の区分が明確であるため、個人では経費にできなかった以下のようなものも経費にできます。
ただし、株式会社設立による消費税の2年間免税効果については、注意が必要です。
2023年10月からインボイス制度が始まり、免税事業者との課税仕入は、段階的に仕入税額控除ができないようになります。
課税事業者からすれば、同じ取引なら課税事業者と取引した方が消費税の納付税額は抑えられるのです。
したがって、免税事業者は取引上不利になることが想定されています。
このような背景から、今後はあえて課税事業者を選択する方が良いケースも出てくるでしょう。
いずれにしても、個人事業主から株式会社を設立(法人成り)して節税効果を期待しているのであれば、事前に一度税理士に相談しておくのがおすすめです。
株式会社は、役員の変更登記・法人住民税の均等割・決算公告費用などの維持費がかかります。
結果として、実質的な増税となってしまったり、社会保険料の負担が増えて困ったりする場合があるからです。
株式会社を設立すると、経営者自身の社会保障が充実します。
個人事業主および株式会社の経営者の社会保険適用関係は、以下の通りです。
老齢年金や障害年金の給付額は、個人事業主なら国民年金部分だけですが、株式会社の経営者なら厚生年金部分(報酬比例)ももらえます。
また、障害年金においては障害の程度が3級でも障害厚生年金をもらえます。
健康保険については、国民健康保険にない健康保険独自の給付があります。
経営者が傷病手当金をもらうのはあまり一般的ではありませんが、株主総会等で役員報酬を減額した場合には可能性があります。
さらに、年収130万円以下の扶養家族が増えても、国民健康保険と違って保険料は増えません。
株式会社設立のデメリットには、以下が挙げられます。
会社設立する前に必ず確認しておきましょう。
株式会社を設立するには、税金や手数料など必ず20万円以上の費用がかかります。
法定費用 | 金額 |
---|---|
定款認証手数料 | ¥50,000 |
定款謄本手数料 | ¥2,000 |
定款の印紙代 | ¥40,000 |
登録免許税 | ¥150,000 |
合計 | ¥242,000 |
この表では24.2万円とありますが、実際には費用を抑える方法もあります。
詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひご確認ください。
関連記事:株式会社設立の費用は最低いくら?設立コストを賢く抑えよう!
個人事業主の場合、利益が出なかったり赤字だったりすると、個人住民税は均等割の5,000円程度もしくは非課税となります。
しかし、株式会社の場合は資本金や従業員数で変動しますが、最低でも7万円の法人住民税均等割を支払わなければなりません。
その他、株式会社は決算公告や役員変更登記などの費用がかかります。
これらは赤字であっても払わなければいけない会社維持費用となるのです。
株式会社を設立すると、会社のお金は経営者のお金ではなくなります。
いくら自分が資本金を払って(出資して)設立した会社であっても、会社のお金は個人が自由に使えません。
そのため、会社から個人に役員報酬として支払わなければならないのです。
役員報酬は原則として期中の変更はできないので、役員報酬の設定は非常に重要なものとなります。
適切な役員報酬の設定は難しいため、設定の都度、ぜひ税理士にご相談するようにして下さい。
経営者自身が社会保険(健康保険および厚生年金保険)に加入できるのはメリットだと紹介しました。
しかし、社会保険料は事業主と従業員が折半して負担することになっています。
例えば、東京都に事業所を構え、45歳の従業員に30万円の給与を支払ったとします。
この場合、従業員に支払う給与の約15%ほどの社会保険料を会社が負担しなければなりません。
参考:令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 | 全国健康保険協会
なお、実際には子ども・子育て拠出金や労働保険料もありますので、上記より少し多い社会保険料となります。
従業員や役員を雇わない1人社長の場合、会社と経営者個人でそれぞれ15%ほど(合計で約30%)の社会保険料を支払います。
青色申告をしている個人事業主であれば、複式簿記により記帳を行っており、株式会社でも複式簿記で記帳するのは変わりません。
しかし、法人税法上の損金と会計上の費用の違い、法人税の申告書別表は個人事業主にはない難しさがあります。
さらに、法人住民税と法人事業税の申告・納付が必要ですから、確実に税務会計の手間は大きくなるのです。
税務署に提出する届出も多数あります。
ちなみに、経理担当などの従業員を自社で雇うより、税理士に合わせて依頼する方が一般的には安く済みます。
経理担当などの従業員を雇うのであれば、社会保険料・給与・福利厚生の負担が大きいからです。
株式会社の設立を考えているのであれば、会社設立後のことも見据えて、早めに税理士に相談しておくと良いでしょう。
税務だけでなく、厚生年金保険・健康保険・労働保険関係の手間も大きくなります。
1人社長なら労働保険の適用事業とはならず、従業員の扶養状況や異動に関する手続きもないので比較的ラクかもしれません。
しかし、従業員を雇うなら、社会保険労務の手続きがかなり煩雑で手間がかかります。
当然、税務においても従業員分の源泉徴収および年末調整の各種手続きで手間がかかります。
参照:
雇用保険事務手続きの手引き|厚生労働省
適用事業所に関すること|日本年金機構
個人事業主と株式会社の違いによるメリット・デメリットを紹介してきました。
株式会社には、税金・対外的信用・資金調達・人材獲得・経営者自身の社会保障の充実など多くのメリットがあります。
しかし、設立手続き・会社維持・税務会計・社会保険・労務の手間と費用は少なくありません。
これらのデメリットを最小限に抑えるためには、早めに税理士に相談しておくことが重要なポイントです。
当事務所においても早い段階で税理士にご相談いただければ、株式会社設立サポートにより、通常より手間と費用を抑えて株式会社設立が可能です。
さらに、会社設立後の税務会計サポートも行っております。
不明点・ご興味等ございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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