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合同会社設立のメリット・デメリットは?株式会社より合同会社がおすすめのケースも解説

個人事業主から法人成りを検討している場合、株式会社と合同会社のどちらにしようか迷っている方も多いのではないでしょうか。

確かに会社設立を検討する上で、一般的によく選ばれる会社形態は株式会社と合同会社です。

一方で、個人事業主のままでいた方が良いのではないかと考えている方もいるでしょう。

一昔前は「起業するなら株式会社が当たり前」と考える人がほとんどでしたが、最近では合同会社が選ばれる割合も増えてきました。

逆に、法人から個人事業主に戻る個人成りという言葉もチラホラ聞きます。

そこで本記事では、株式会社と比較しての合同会社のメリット・デメリット、法人化によるメリット・デメリットをあわせて紹介します。

法人成りを検討する目的や経営方針などの事情によって、選ぶべき会社形態が変わります。

ぜひ本記事を参考に、ご自身に最適な会社形態を選択してください。

まずは株式会社と合同会社の違いをまとめましたので、確認していきましょう。

項目 株式会社 合同会社
設立費用
  • 定款の作成:書面なら収入印紙4万円
  • 定款の認証:手数料等5.2万円
  • 設立登記:登録免許税として最低でも15万円

合計額:24.2万円もしくは20.2万円

  • 定款の作成:書面なら収入印紙4万円
  • 設立登記:登録免許税として最低でも6万円

合計額:10万円もしくは6万円

出資者 発起人および株主
(会社法第32・34条)
発起人および社員
(会社法第578条)
出資者責任 間接有限責任 間接有限責任
機関設計 必要 不要
業務執行権限および意思決定機関
  • 取締役または取締役会
    (会社法第348条)
  • 重要事項は株主総会(会社法第295条)
  • 社員
    (会社法第590条2項)
  • 原則として常務は社員単独で可能
  • 詳細は定款で定めることができる
役員任期
  • 最長2年
    (会社法第332条)
  • 非公開会社なら最長10年
なし
損益分配(剰余金の配当) 役員報酬出資比率に応じた配当
(純資産額300万円以上かつ株主総会での決議が必要)
  • 役員報酬原則として出資比率に応じた額を分配する
  • 定款で定めることもできる
    (会社法第622条)
決算公告義務 あり
(会社法第440条)
なし
資金調達 銀行以外の第三者からも資金調達可能(株式) 株式による資金調達はできない
人材獲得・採用 しにくい しやすい

合同会社設立のメリット

合同会社設立のメリットは、大きく分けて「法人成りによるメリット」と「株式会社と比較してのメリット」があります。

<法人成りのメリット>

  • 個人事業主より融資を受けやすい
  • 個人事業主より人材を獲得しやすい
  • 会社設立後2年間は消費税の免税事業者となる
  • 経費として認められる範囲が広い
    (節税策が多い)
  • 損失(赤字)を最大10年間繰り越せる
  • 厚生年金に加入するため社会保険が充実する

<株式会社と比較した合同会社のメリット>

  • 設立費用が安い(最低6万円)
  • 決算公告が不要
  • 役員任期の縛りがない
  • 株式会社と比べて利益配分が自由
  • 意思決定が早くスピーディーな経営判断ができる
  • 合同会社から株式会社へ変更も可能

法人成りのメリットについては以下の記事で詳しく解説しているため、本記事では簡単に紹介します。

詳しく知りたい方は、あわせて確認してみてください。

関連記事:株式会社設立のメリット・デメリットは?デメリットを抑える方法も解説

個人事業主より融資を受けやすい

合同会社を設立して法人化すると、個人と法人の収支の区別が明確であるため審査の際に有利です。

また、個人より法人向けの融資のほうが融資額は高い傾向にあります。

個人事業主より人材を獲得しやすい

合同会社を設立して法人化すると、個人事業主の時より人材を獲得しやすくなるでしょう。

その理由は、福利厚生・安定性・信頼性・社会保険などの面から法人の方が安心できるからです。

法人なら基本的に「社会保険あり」として人材募集をかけることができます。

個人事業主の場合は常時使用の従業員が5人以上いれば適用事業所となりますので、個人事業主で社会保険を適用している割合は多くありません。

参考:適用事業所に関すること|日本年金機構

設立後2年間は消費税の免税事業者となる

消費税の納税義務は、原則として前々年の課税売上高が1,000万円を超えていた場合に生じます。

しかし、法人成りするとまったくの別人格(個人事業主→法人)となるため、納税義務は免除されます。

これは消費税の納税義務を判定する基準期間が2年前(2期前)であり、基準期間がないためです。

ただし、2023年10月1日からは適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が段階的に導入されます。

インボイス制度が開始すれば、免税事業者からの仕入・経費支払などは仕入税額控除できません。

そのため、免税事業者は課税事業者から避けられてしまう可能性が出てくることも予想されています。

場合によっては、あえて課税事業者を選択した方が良い場合もあるでしょう。

参考:インボイス制度の概要|国税庁

経費として認められる範囲が広い(節税策が多い)

個人事業主の場合、プライベートにも関連する支出は適切な割合で経費(家事按分)とします。

また、家族への給与等は原則として経費にはできず、経費にできても一定の制限があります。

一方、合同会社を設立すると自然に家事区分が明確となり、家族への給与等も経費にできます。

ただし、家族が役員もしくはみなし役員となると、定期同額給与(金額を変えられない)など一定の条件を満たすことが必要です。

<個人事業主では難しい・できない法人の節税例>

  • 役員報酬の支払
  • 旅費規定により支給する交通費や宿泊費
  • 慰安(従業員)旅行費
  • 社有車関連費
  • 社宅家賃の差額や購入額(減価償却)
  • 退職金共済等の掛金

節税については経費にできる範囲や条件など細かい決まりがありますので、事前に税理士に相談すると良いでしょう。

損失(赤字)を最大10年間繰り越せる

青色申告の承認を受けて青色申告書を提出し続ければ、過去10期の欠損金(赤字)を損金に算入できます。

つまり、過去10年間の赤字を黒字所得と相殺して税金を抑えられるのです。

個人事業主の場合は青色申告で3年間ですので、法人の方が長期にわたって赤字との相殺が可能となります。

厚生年金に加入するため社会保険が充実する

個人事業主の場合は国民年金保険と国民健康保険に加入しますが、合同会社を設立すると社会保険が適用されます。

合同会社の経営者(出資者・社員)も社会保険の被保険者です。

したがって、以下のような社会保険の各種給付等が充実します。

  • 老齢年金や障害年金の給付において、国民年金だけでなく報酬比例の厚生年金を受けられる
  • 国民健康保険にはない健康保険独自の給付(傷病手当金・出産手当金)を受けられる

また、家族が増えても保険料が変わらないのは、健康保険のメリットだと言えるでしょう。

国民健康保険は世帯単位で保険料を計算しますので、世帯の所得(所得割)や人数(均等割)などによって保険料が上がります。

これまでは合同会社設立(法人成り)によるメリットを紹介しましたが、ここからは株式会社と比較した合同会社設立のメリットを紹介します。

設立費用が安い(最低6万円)

合同会社は、株式会社と比べて会社設立にかかる法定費用が安いです。

法定費用 株式会社 合同会社
定款認証手数料 ¥50,000 ¥0
定款謄本手数料 ¥2,000 ¥0
定款の印紙代 ¥40,000 ¥40,000
登録免許税 ¥150,000 ¥60,000
合計 ¥242,000 ¥100,000

合同会社では、定款認証が不要で登録免許税が安いため、株式会社より設立費用を抑えられます。

定款の印紙代については、書面ではなく電磁的記録により作成(いわゆる電子定款)すれば不要です。

しかし、電子定款でも記名・押印に代わる措置として電子署名が必要ですから、電子署名を付与できる準備をしなければなりません。

株式会社および合同会社の設立費用については、以下の記事も合わせて参考にしてください。

関連記事:
株式会社設立の費用は最低いくら?設立コストを賢く抑えよう!
合同会社設立の費用は?司法書士や税理士に代行を依頼するべきか?

決算公告が不要

株式会社は、決算後に貸借対照表を公告しなければいけません。

ウェブページでの電子公告も可能ですが、以下の条件がつきます。

  • 貸借対照表の全文を掲載
  • 掲載アドレスを法務局に登記する

一方、官報での決算公告は貸借対照表の要旨のみを掲載し、費用は目安として8万円程度。

このように費用と手間がかかる決算公告ですが、合同会社では不要です。

毎年、決算広告するための費用や手間がかかりません。

役員任期の縛りがない

株式会社では出資者が1人であっても、取締役という業務執行を担う機関を設置します。

その取締役には任期が定められており、株式の公開会社なら最長2年・非公開会社なら最長10年です。

たとえ1人社長であっても、株主総会の決議による議事録を作成し、役員変更(再任・重任)の登記をしなければなりません。

その役員変更登記にかかる登録免許税は、資本金1億円以下なら1万円です。

一方、合同会社はそもそも取締役という概念がないので任期がなく、役員変更登記にかかる費用や手間がかかりません。

株式会社と比べて利益配分が自由

会社にお金を出した(出資)人に、利益を配当することがあります。

株式会社でも合同会社でも、原則は出資額に応じた配当をしますが、合同会社は定款で自由に定めることができるのです。

株主の有する株式の数に応じて配当財産を割り当てることを内容とするものでなければならない。

※一部簡略して記載
引用元:会社法第454条3項(剰余金の配当に関する事項の決定) | e-Gov法令検索

 

損益分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。

引用元:会社法第622条(社員の損益分配の割合) | e-Gov法令検索

意思決定が早くスピーディーな経営判断ができる

株式会社では、資本金・報酬・解散・組織変更など重要事項について、株主総会で決議しなければなりません。

たとえ株主が社長1人であっても、株主総会の議事録を作成します。

合同会社ならこのように株主を招集して決議する必要はなく、定款で会社運営について自由に定めることができます。

そのため、株式会社よりも意思決定が早く、スピーディーに会社経営ができるのです。

合同会社から株式会社へ変更も可能

実は、合同会社を設立してから株式会社へ変更することもできます。

事業が軌道に乗り、さらなる事業拡大を目指す段階になったら、株式会社へ変更するという流れも良いでしょう。

ただし、合同会社から株式会社への変更には、以下のように手間と費用がかかります。

手続き 内容 費用
組織変更計画書 目的、商号、本店所在地、株式の数など定款で定める事項と効力発生日(定款変更の効力)を記載する
(会社法第743・746条)
¥0
総社員の合意 定款に別段の定めがある場合を除き、効力発生日の前日までに、組織変更計画について総社員の同意を得なければならない
(会社法第781条)
¥0
債権者保護
  • 組織変更をする旨と、債権者が一定期間内に異議を述べることができる旨を官報に記載して公告する
  • 債権者から異議があれば、弁済または担保を提供するか、信託保全の措置を講じる。
    (会社法第779条の準用)
¥32,000
組織変更の効力発生 官報公告からおよそ1ヶ月後 ¥0
組織変更登記 以下添付書類を添付して、解散および登記申請書を法務局に提出する

  • 定款
    (総社員の同意書の記載を援用可能)
  • 組織変更計画書
  • 代表取締役の選定に関する書面
    (定款、取締役会議事録、株主総会議事録など)
  • 取締役、代表取締役及び監査役の就任承諾書
  • 取締役および監査役の本人確認証明書
    (住民票記載事項証明書、運転免許証のコピーなど)
  • 公告及び催告をしたことを証する書面
    (官報の控えなど)
  • 登録免許税法施行規則第12条第4項の規定に関する証明書
  • 委任状
    (代理人による申請の場合)

※異議を述べられた場合、会計参与や会計監査人を設置する場合、株主名簿管理人を置いた場合は別途添付書類が必要

¥60,000

参照:持分会社の組織変更(持分会社→株式会社)の登記申請書【R3.2.15更新】:法務局

費用は以下のとおりです。

  • 合同会社の設立:最低6万円
  • 株式会社への組織変更:約10万円
  • 合計:約16万円

最初から株式会社を設立するなら法定費用で最低20.2万円ですので、費用だけ見れば合同会社から株式会社に組織変更した方が法定費用を抑えられます。

合同会社設立のデメリット

合同会社には、「法人成りによるデメリット」と「株式会社と比較してのデメリット」があります。

<法人成りのデメリット>

  • 会社の利益を個人が自由に使えない
  • 赤字でも最低7万円の法人住民税を払う
  • 法人税の申告など税務手続きが必要
  • 従業員の社会保険料と各種手続きの負担がある

<株式会社と比較した合同会社のデメリット>

  • 社員同士の対立があるとトラブルが起こりやすい
  • 株式会社と比べると人材獲得にやや不利
  • 融資以外の資金調達は難しい

会社の利益を個人が自由に使えない

株式会社でも合同会社でも、会社の利益は個人が自由に使えません。

他に出資した人がいなくても同じです。

もし会社のお金を個人が使ってしまうと、税務調査で指摘されてペナルティが課される場合があります。

それではどうするかと言うと、会社から個人に役員報酬という形で個人のお金にするのが基本です。

ただし、役員報酬は期中の変更に制限があるので、慎重に決定しなければなりません。

赤字でも最低7万円の法人住民税を払う

法人の場合、赤字だとしても法人住民税で最低7万円を払わなければなりません。

住民税(地方税)には、所得に関係なく均等に税金を計算する「均等割」という課税方式があるからです。

均等割額は資本金の額・従業員数・自治体によって変わりますが、中小企業の場合はほとんど7万円となります。

法人税の申告など税務手続きが必要

個人事業主なら所得税や消費税の申告のみですが、法人では法人税・法人住民税・法人事業税の申告・納付もしなければなりません。

ちなみに、個人の住民税・事業税の申告は、所得税の確定申告で兼ねています。

会計・記帳自体は個人の青色申告とほぼ同じ要領ですが、法人税の申告・決算書類は所得税よりもかなり難しく、簡単にできるものではありません。

従業員の社会保険料と各種手続きの負担がある

個人事業主でも常時使用する従業員が5人以上いれば、社会保険の適用事業所となります。

一方、法人の事業所は1人社長であっても強制適用事業所です。

そのため、法人を設立すると社会保険の適用手続きが必要で、報酬額が変わった時や被扶養者に異動があった時なども手続きが必要になります。

従業員を雇った場合は、事業主も報酬の約15%を負担するため、会社にとっても軽い負担ではありません。

 

ここまでは、個人事業主と比べた合同会社(法人)のデメリットです。
以降では、株式会社と比べた合同会社のデメリットを紹介します。

社員同士の対立があるとトラブルが起こりやすい

合同会社のメリットとして「意思決定が早くスピーディーな経営判断ができる」と紹介しました。

このメリットは、1人社長もしくは出資者(社員)の合意があることが前提です。

つまり、社員同士に意見の対立があれば、トラブルが起こりやすいことを示しています。

損益配分についても定款の定めが優先されることを考慮すると、合同会社は定款による内部自治が非常に重要となります。

株式会社と比べると人材獲得にやや不利

合同会社と株式会社では、まだまだ株式会社の方が知名度が高いと言えます。

合同会社と株式会社が同じ条件で求人掲載しているのであれば、応募者としては知名度が高い株式会社の求人に応募することが考えられます。

したがって、株式会社に比べると合同会社は人材獲得にやや不利なのです。

融資以外の資金調達は難しい

合同会社は、株式会社と違って株式を発行できません。

株式は役員が持っていることも多いですが、第三者から出資を受けるためにも有効なものです。

株式上場したとすれば、より多くの投資家からの出資を期待できます。

そのため、合同会社は銀行や日本政策金融公庫など金融機関を除き、第三者から多額の資金を調達するのは手段が限られるのです。

株式会社と合同会社はどちらがおすすめか

合同会社設立のメリット・デメリットを紹介してきました。

最後に、これらのメリット・デメリットを踏まえて、株式会社と合同会社の選び方を提案します。

株式会社がおすすめの場合

合同会社よりも会社設立・維持にかかる手間と費用の負担が大きいものの、それ以上に重視すべきものがあれば株式会社がおすすめです。

  • 最初から株式上場を目指している場合
  • 人材獲得や多額の資金調達により事業拡大を目指している場合
  • 信用度・知名度を気にする場合
    (代表社員より代表取締役がいいなど)

合同会社がおすすめの場合

基本的な考え方としては、合同会社から株式会社への変更も可能なことから、株式会社のメリットを今すぐに求めているのでなければ合同会社がおすすめです。

  • 多額の資金調達や人材獲得を急いでいない場合
  • 消費税の免税を含め節税目的の場合
  • 会社設立にかかる費用と手間を抑えたい場合
    (約24万円と約10万円)
  • 会社維持にかかる費用と手間を抑えたい場合
    (役員変更登記や決算公告が不要)
  • 家族以外の出資者を想定していない場合(トラブル防止)
  • 社会保険(年金・健康保険)の充実のみが目的

なお、そもそも節税目的で法人成りすべきかどうかについては、事前のシミュレーションが必要になります。

会社設立をする前に早めに税理士にご相談ください。

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