会社設立・起業すると、事業運営以外にもさまざまな手続きが必要となります。
たとえば、社会保険の加入手続きや労働保険などもその1つです。
社会保険・労働保険が適用されるかどうかは、従業員の労働状況によって変わります。
保険の種類によって、以下の違いがあります。
常用的雇用とは、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、一般社員の4分の3以上である場合は被保険者になります。
また、4分の3未満であっても以下の条件をみたす場合は、被保険者になります。
目次
会社設立すると、社長1人の法人であっても社会保険(健康保険・厚生年金保険)に強制加入しなければなりません。
ちなみに、個人事業主であっても社会保険適用業種で、かつ5人以上の従業員を雇用していれば、社会保険に加入する必要があります。
社会保険に未加入の会社には法的に罰則があり、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が課される可能性があります。
また、未加入の通達を受けたら、最大2年間の追徴金を課されるかもしれません。
法的リスク以外にも、社保未加入のデメリットはあります。
社保未加入の会社は、ハローワークに求人票を提出することができないのです。
そもそも求職者からの印象が悪いので、人材採用自体が困難になります。
ですので、会社設立と社会保険の加入手続きはセットで考えておきましょう。
なお、社会保険の加入手続きは、事業所を管轄する年金事務所に必要書類を提出することで行います。
提出は、窓口持参・郵送・電子申請のどの方法でも構いません。
社会保険の加入手続きは、義務が発生した日から5日以内に行います。
会社設立・起業時には、あらかじめスケジュールをしっかり立てて、遅滞なく手続きを進めましょう。
社会保険に新規加入する際には、「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を提出します。
法人の場合は、会社の登記簿謄本の原本をあわせて提出します。
事業所の所在地が登記住所と異なる際は、事業所所在地が確認できる書類も準備しましょう。
社会保険の加入対象者がいる場合は、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を準備します。
この手続きも、義務が発生した日から5日以内に行います。
代表者は会社設立のタイミングで提出が必要ですし、その後も従業員を採用するたびにこの手続きが発生します。
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を作成する際には、被保険者の基礎年金番号が必要になります。
そのため、従業員の入社のタイミングで年金手帳のコピー等をもらえるよう伝えておくとスムーズです。
被保険者に扶養家族がいる場合、「健康保険被扶養者(異動)届」も合わせて必要になります。
扶養と認められているかを確認し、漏れがないように対応してください。
扶養家族と認められるためには、年収130万円未満である必要があります。
年収103万~130万未満の場合は、「課税(非課税)証明書」を準備しましょう。
<同居していなくても扶養と認められる家族>
配偶者、子・孫・弟妹、父母・祖父母など直系尊属
<扶養家族にするためには同居が必要な家族>
3親等内の親族、内縁関係の配偶者の父母・子
今まで自分1人でビジネスをしてきた経営者・個人事業主の人が初めて従業員を雇う時、気を付けなければいけないのが「労働保険の手続き」です。
従業員を雇用すると、社会保険に加えて労働保険(労災保険・雇用保険)への加入手続きも必要になります。
日本の法律では、労働者(パートタイマー・アルバイト含む)を1人でも雇用していれば、業種・規模の如何を問わず、労働保険の適用事業となります。
つまり、事業主は成立(加入)手続きを行い、労働保険料を納付しなくてはいけません。
なお、労働保険とは、仕事中の病気やケガを補償する「労災保険」と休業時や失業時の生活を保障する「雇用保険」の総称です。
労働者の福祉・従業員が安心して働けるようにする上で、非常に重要な役割を担う制度であると考えましょう。
さて、労働保険の適用事業となったら、労災保険に関しては会社が全額、雇用保険に関しては会社と従業員が折半して保険料を払わなくてはいけません。
しかし、毎月の出費が面倒だからという理由で保険料を払わないと何が起こるか考えてみましょう。
前提として、成立手続きを怠っている事業所に対しては、各地の労働基準監督署から指導が入ります。
そして、成立手続きをしない間に、従業員が仕事上のケガが原因で亡くなってしまったとしましょう。
この場合「労災保険未手続事業主に対する費用徴収制度」に基づき、以下の(1)と(2)のペナルティが課されます。
(1)最大2年間遡った労働保険料及び追徴金(10%)
(2)未手続きの理由が故意の場合は労災保険給付額の100%、過失の場合は労災保険給付額の40%
つまり、「労働保険料を払いたくないから」という理由だけで成立手続きをしていなかったとしたら、故意とみなされて労働保険給付額の100%の金額が徴収されます。
会社には金銭的な負担と従業員の家族との対立という2つのダメージが加わるのです。
事業を立ち上げ健全に大きくしていくためには、法律を守ることは非常に大事なのは言うまでもありません。
まずは、必要な手続きを守ることから始めてみましょう。
会社設立・起業して従業員を雇用すると、給与の支払い以外にも社会保険料などの会社負担分が発生します。
この社会保険料などの会社負担分を甘くてみてはいけません。
思ったよりも負担額が大きいので、キャッシュフローに与える影響も大きいのです。
会社設立を考えたら社会保険・労働保険についても理解し、どの程度の費用負担が発生するのか把握しておきましょう。
それでは、社会保険・労働保険の費用は、具体的にはどのくらいになるのでしょうか?
今回は、東京都内にある飲食店が30歳のスタッフを新規雇用した場合で試算してみます。
(社会保険・労働保険は、業種や自治体・労働者の年齢によって保険料率が異なります)
月給は250,000円と仮定し、令和3年5月時点での保険料率でシミュレーションしてみます。
毎月発生する社会保険料の内訳は、以下の通りです。
この内の半分を会社負担しますから、1人につき37,518円の社会保険料負担が毎月発生します。年額にすると450,216円となります。
また、この試算にはボーナス分が入っていませんから、給与体系によってはさらに社会保険料が高額になる可能性もあります。
一般の事業の場合、雇用保険料率は0.9%(従業員0.3%、事業主0.6%)です。
これに基づくと、総雇用保険料は2,250円で、うち1,500円を事業主が負担します。
労災保険については、全額事業主負担です。
飲食業の場合の保険料率は0.3%ですから、保険料負担は750円です。
(実際には年1回まとめて納付します)
社会保険料・労働保険料の会社負担額を合計すると、39,768円。
従業員の給与は250,000円と仮定していましたから、給与額の約15%の負担が発生するのです。
今までご説明してきた通り、社会保険への加入手続きは会社設立したら必ず発生する義務です。
また、会社設立と同時に社会保険料の負担も発生するということを忘れてはなりません。
社員給与の15%程度が会社負担分となるので、支払いが滞ることがないよう当面の運転資金をしっかり確保しておくようにしてください。
さらに、会社設立・起業後に従業員を雇用する際には、より大きな社会的責任を負うことになります。
中でも社会保険料・労働保険料の負担は、経営者にとって決して軽いものではありません。
毎月発生する社会保険料の負担は、税金よりもキャッシュフローに大きな影響を与えます。
このように会社設立・起業を考えるにあたっては、社会保険料の負担なども視野に入れて、創業資金や人材採用の計画を進めていく必要があります。
そのため、早めに信頼できる税理士を見つけ、幅広いアドバイスを受けることをオススメします。
「良い税理士を探す方法」については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:【税理士が教える】安心できる理想の税理士を探す方法
また、「信頼できる税理士の選び方」について詳しくまとめた記事もご用意しています。こちらも合わせて参考にして下さい。
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