【この記事は加筆・修正を加え、2023年2月22日に最新版に更新されました】
会社設立を考える時に、どの会社形態で会社設立するかは起業時の大きな選択です。
現在の会社法においては、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社などの選択肢がありますが、一般的に選択されるのは「株式会社」か「合同会社」です。
どれも一緒では?と思うかもしれませんが、選ぶ会社形態によっては初期費用も維持費用も変わりますし、その後の経営にも大きな違いが生まれます。
起業・開業を考えている人は、株式会社と合同会社それぞれのメリット・デメリットをしっかりと把握し、自身のビジネスに最適な会社形態を選んで会社設立するようにしましょう。
なお、会社設立のメリット・デメリットについては、株式会社の場合と合同会社の場合に分けて、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、合わせてチェックしてみてください。
関連記事:株式会社設立のメリット・デメリットは?デメリットを抑える方法も解説
関連記事:合同会社設立のメリット・デメリットは?株式会社より合同会社がおすすめのケースも解説
目次
会社設立といっても、実際には大きく分けて4つの会社形態が会社法で定められています。
それぞれに特徴がありますので、まずはそれぞれの会社形態をよく理解し、自身の事業内容やビジネスプランに合わせて、どの会社形態で会社設立するのか検討するとよいでしょう。
株式会社とは、有限責任の出資者によって成り立つ会社のことです。
特徴としては、会社のオーナー(株主)と経営者(取締役)が分離していることがあります。
出資者(資本)と社長(経営)が分離していることで、利益を出資者に分配するという形を取るのが一般的です。
ただ、中小規模の株式会社の場合は、出資者と経営者が同一人物という場合も少なくありません。
以前は、株式会社を設立するためにはいくつかの要件(資本金1,000万円以上など)を満たす必要がありました。
しかし、会社法改正以降は資本金要件も撤廃され、一人でも会社設立が可能になるなど、株式会社設立が非常に簡単になりました。
そのため、起業時の会社設立として「株式会社」を選ぶことも十分に可能です。
新会社法の施行により、新しい会社形態「合同会社(LLC)」が創設されました。
今まで小規模事業者の会社設立では、「合名会社」や「合資会社」という会社形態の選択がありましたが、いずれも無限責任であり、経営者にとっては非常に大きなリスクがありました。
合同会社では、経営者は出資額を限度とする有限責任となったため、無限責任の会社形態よりもリスクが大きく軽減されます。
また、株式会社の設立と比べると会社設立にかかる費用も安いため、コストを抑えた会社設立をお考えの経営者の方は合同会社設立もご検討ください。
合同会社は、2006年(平成18年)5月の新会社法の施行によって認められた、出資金1円から設立できる新しい会社形態です。
そのため、まだまだ認知度は低いですが、欧米では株式会社と同じくらい活用されています。
合同会社は、社員全員が有限責任を持つ会社です。
株式会社とは異なり、出資者の権利も出資比率に応じたものではなく、原則として総社員の同意に基づき、会社の定款変更や意思決定を行っていきます。
合同会社の最大の特徴は、出資者の責任が出資額の範囲内で済む有限責任でありながら、意思決定方法や利益の配分が出資比率に関係なく、自由に決められるというところにあります。
出資した資金の額に関係なく、知識やノウハウ・技術を提供した人には、出資者と同じかそれ以上のリターンを受け取れる可能性があるということになります。
また、最低資本金額の規制もなく、出資金1円から設立可能です。
合同会社という名前が付いていますが、社員が1名以上いれば会社設立することができます。
合同会社は、特に資金提供者・企画提供者・制作者などの間でそれぞれの貢献度に応じて報酬を自由に決めることができる会社運営をしたい方や、簡単な設立方法で費用もあまりかけたくない方には、特におすすめしたい会社形態です。
出資額に関係なく無限に責任を負う「合名会社」や「合資会社」とは違い、社員(出資者)は株式会社の出資者と同じく出資額の範囲までしか責任を負いません。
「株式会社」と違い、利益や権限の配分が出資金額の比率に拘束されません。
また、取締役会や監査役のような機関を設置する必要がありません。
社員1名のみの合同会社の設立・存続が認められます。
社員の入社・持分の譲渡・会社設立後の定款変更は、原則として社員全員の同意によります。
各社員が原則として業務執行権限を有しますが、定款で一部の社員のみを業務執行社員と定めることも可能です。
貸借対照表・損益計算書・社員持分変動計算書の作成が必要です。
会社形態なので、法人であることのメリットが受けられます。
合同会社(LLC)によく似た組織として、有限責任事業組合(LLP)があります。
LLPは組合なので法人格がありません。そのため、LLPから株式会社には変更ができません。
しかし、合同会社から株式会社への変更は可能です。
ただし、LLCは法人であるため、法人税が課税されます。
LLPの場合は、構成員課税が適用されることとなります。
上記の特徴を踏まえると、LLPに向いている事業は「個人や企業の信用や能力を前面に出す事業」「期限を区切ったプロジェクト」などとなります。
逆に、LLCの方が向いている事業は「将来の株式公開を予定している事業」「永続的に行われる事業」「安定的な収益を生み出すような事業」などとなります。
合同会社は、持分会社という分類に分けられます。この持分会社には、合名会社や合資会社が含まれます。
しかし、合名会社や合資会社では、必ず無限責任社員が必要で、社員の保護という観点からはなかなか使いづらい会社形態でした。
一方で有限責任制を採用した株式会社や有限会社の制度がありましたが、取締役会や監査役などの機関の運営や配当規制などに強行規定があり、こちらも利用しづらいところがありました。
合同会社は、これらの弱点をカバーする新しい会社形態であると言えます。
株式会社を設立するメリットとしては、以下の5つが挙げられます。
会社の所有と経営が分離しているため、より多くの資本を集めることができます。
また、個人よりも会社形態をとった方が金融機関からの銀行融資も受けやすくなります。
万が一のことがあっても、出資額以上に責任を問われることはなく、個人資産は守られます。
株式に譲渡制限をつけることで、取締役会の設置が不要になります。
会社の設立登記をすることで、登記簿謄本に記載されます。
取引先は登記簿謄本によって会社の概要を調べることがあるため、新規取引の際に安心と信頼を与えることができます。
青色申告の特典として、ある年に赤字が出たとしても翌期以降の黒字所得と相殺して税金を計算することができます。
また、ある年に赤字が出ても前年が黒字だった場合には、前年の税金から赤字分の還付を受けることができます。
株式会社を設立するデメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
定款認証+登録免許税で25万円程度必要。
合同会社であれば定款認証不要、登録免許税は6万円
関連記事:株式会社設立のメリット・デメリットは?デメリットを抑える方法も解説
合同会社も株式会社と同じく、有限責任の社員によって構成される会社です。
社員が出資者と役員を兼ねているので、株式会社と比べて小さい企業(スモールビジネス)として展開されることが多いという特徴があります。
合同会社を設立するメリットとしては、以下の5つが挙げられます。
合同会社は人的会社と呼ばれ、「人」を主体に考える会社であり、お金だけでなく知識・ノウハウ・技術・人脈・経験などのすべてが資本となってきます。
たとえ出資額が1円でも、組織にとって重要な役割を果たす人には、配当を多くすることができます。また、そうしたアプローチが組織の活性化にもつながります。
社員が出資者と役員を兼ねているので、意思決定が迅速です。
合同会社設立のメリットは、何と言ってもその設立費用の安さでしょう。
登録免許税が株式会社は最低でも15万円かかるのに対して、合同会社は6万円で済みます。さらに、公証役場での定款認証も不要のため、認証費用の5万2千円も必要ありません。
これにより、会社設立時にかかるコストを安く抑えることができます。
合同会社は株式会社と違い決算公告の義務がないので、情報公開の手間やコストがかかりません。そのため、毎年の官報の費用(約6万円)がかからないのです。
また、役員の任期も無制限なため、株式会社のような役員変更登記の必要がありません。(株式会社は原則2年ごと、条件によっては最長10年で役員変更登記が必要)
合同会社を設立するデメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
株式会社では「所有」と「経営」の分離、すなわち株主が会社を所有し、経営のプロである取締役に経営を委任する形になります。
これに対して、合同会社は社員全員が経営に参加することが求められています。
したがって、社員同士で意見が対立すると、意思決定が滞る可能性があり、業務執行のスピードが遅くなる可能性があります。
平成18年5月施行の会社法により創設された新しい会社形態であるため、社会的な認知度はまだまだ低いといえます。合同会社としての評価もこれから築かれていきます。
そのため、信用度も株式会社と比較すると低く、融資に関しての銀行などからの評価についてもまだ未知数です。また、採用の際に人材が集まりにくい可能性もあります。
関連記事:合同会社設立のメリット・デメリットは?株式会社より合同会社がおすすめのケースも解説
将来的な成長や取引上の信用度を考慮すると、一般的には株式会社の方がおすすめです。
しかし、次のような場合には、合同会社をおすすめしています。
株式会社と合同会社は、節税や社会保険の加入によるメリット・資本金の額などの条件はまったく同じですが、その他で細かく違いがあります。
起業するにあたっては、どちらが良いのかしっかり比較した上で会社設立をしましょう。
業種や将来展望・資金調達・事業の規模など、さまざまな観点から考える必要があるので、悩まれる経営者も多いはず。
その際は、税理士などの専門家にアドバイスを求めるのもオススメです。事業プランに沿ってどちらを選ぶべきかアドバイスがもらえますよ。
起業時は、会社形態以外にも事業内容など考えるべきことがたくさんあります。
外部専門家の知見も取り入れて、賢く会社設立をしてください。