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個人事業主と法人、どっちがお得?会社設立のメリット・デメリットも解説

【この記事は加筆・修正を加え、2023年2月20日に最新版に更新されました】

いざ起業・開業を志した時に、「個人事業主として独立するか」それとも「会社設立して法人として独立するか」というのは非常に重要な選択です。

最初にどちらを選択するかで、事業形態や税金の状況が大きく変わるからです。

あとで後悔しないように、起業・開業前に双方の違いや会社設立のメリット・デメリットをきちんと比較し、どちらを選択するのかを慎重に検討しましょう。

まずは、会社設立のメリット・デメリットがわかる一覧表を以下にご用意しました。

この一覧表の中でも特に重要な部分にポイントを絞りながら詳しく解説していきますので、ぜひ起業・開業時の選択にお役立てください。

関連記事:株式会社設立のメリット・デメリットは?デメリットを抑える方法も解説

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目次

個人事業主で起業するメリット

個人事業主として起業するメリットとしては、ランニングコストを低く抑えられること、手続きが簡単なことが挙げられます。

1人でこじんまりと事業を始めたい人や売上がどのくらいか予測できない場合は、リスクや負担の少ない個人事業主でスタートすると良いかもしれません。

個人事業主で起業するメリットを順に解説します。

事業開始等の手続きがスムーズ

会社設立をすると、会社設立登記や決算申告など様々な手続きが発生します。
もし株式会社を設立するなら、25万円前後の会社設立費用もかかります。

しかし、個人事業主の場合は、事業開始の際に税務署に届け出るだけです。
手続き負担がかなり少ないです。

また、会社設立すると個人の確定申告(年末調整業務)だけでなく、法人の決算申告も行わなければなりません。
専門的な知識が必要になりますから、税理士・会計事務所の力が不可欠になってきます。

それに比べて、個人事業主は税金の申告も確定申告のみで、自身で済ませるケースがほとんどです。

利益が少ない場合、税金が発生しない

個人事業主が支払う税金は、基本的に所得税・住民税です。(ある程度の事業所得が発生すると、事業税も発生します)
売上・利益に応じて課税額が決まるので、売上・利益がなければ税金負担は発生しません。

ところが、法人の場合は「法人住民税」として一定の均等割額が課されるため、赤字であっても毎年7万円程度の納税が求められます。

交際費を全額経費計上できる

法人と個人事業主では、経費計上できる項目が異なります。

なかでも個人事業主としてメリットが大きいのが、「交際費が全額経費になる」ということ。
法人だと、一定の制限が発生する部分です。

事業に関係する打合せ代金や会食代などを経費にできますから、節税効果が高いです。

起業時に会社設立するメリット

会社設立する大きなメリットとしては、「節税」「信用度」「資金調達」「保障」「その他」の5点が挙げられます。なかでも法人化による節税メリットは絶大です。

様々な方法で節税ができる

会社設立すると、個人事業主ではできなかった控除や経費が認められるようになります。
「ある程度売上・利益が増えると、法人化するほうが節税になる」と言われる所以です。

税金面で主に個人事業主と違う点は、以下の通りです。

<法人税の税率が一定>

個人事業主が支払う所得税は、所得額が高くなるほど税率も上がる累進課税(最高税率は45%)です。

しかし、法人税は一定税率で、普通法人の場合は最高でも23.2%(平成30年4月1日以後に開始する事業年度)。事業の利益に対する税金が抑えられます。

<給与所得控除が受けられる>

個人事業主の場合は、収入から必要経費を引いた額が全額所得となりますが、会社設立して法人化すると経営者への役員報酬は給与所得扱いになります。
給与収入に応じた給与所得控除を受けられるので、個人の所得税負担が抑えられます。

<家族に給与を支払える>

個人事業主では家族に給与を支払うには事前に届け出が必要ですが、会社設立すればその制限がなくなります。
家族を役員にして役員報酬を支払うことで所得を分散させ、法人税や経営者の所得税を節税できます。

<赤字の繰越控除が10年できる>

個人事業主の場合は3年の繰越控除ですが、法人化すると10年赤字を繰り越して控除できます。(平成30年4月1日以後に開始する事業年度)

<消費税の免税期間がある>

課税売上高が1,000万円を超える個人事業主は、消費税の納税義務が発生します。
法人化すると、会社設立の初年度と翌年の2年間は消費税が免税となるので、税負担を抑えられます。

<幅広い経費が認められる>

個人事業主では経費にできなかった生命保険や自宅兼事務所、退職金などが経費になります。
たとえば、法人で生命保険に加入することで、支払った保険料の一部を経費として計上できます。

<出張手当を経費にできる>

法人化すると、経営者についても旅費や宿泊費の実費以外に出張手当を支払い、必要経費として計上できます。

社会的信用度が高い

会社設立して法人化する方が、個人事業主よりも圧倒的に社会的信用度が高いです。

<取引先が広がる>

一定規模の法人と取引をしたい場合、やはり会社設立する方が有利になります。
なぜなら、信用度が重視されることが多いからです。
「取引するためには法人化が必要だ」と取引先に言われる方も少なくないようです。

<人材が確保しやすい>

スタッフを雇用したい時、会社設立している方が採用につながりやすいようです。

資金調達が柔軟にできる

会社設立して法人化する方が、銀行からの借り入れがしやすくなり、補助金や助成金といった資金調達の幅も広がります。
また、株式会社の場合には株式を増資することで、幅広く自己資金を増やすことができます。

保障が得られる

<退職金が支払える>

会社設立して法人化すると、経営者や家族従業員に退職金を支払うことができ、かつ、その額が必要経費として計上できます。

<社会保険に加入できる>

個人事業主の場合は、一般的に国民健康保険と国民年金に加入するのが原則です。
この場合、扶養家族分の保険料も発生しますし、所得に応じて保険料が高くなってしまいます。

しかし、会社設立すると社会保険への加入が義務化されるため、経営者自身も家族も社会保険に加入できるようになります。
実は、会社設立した方が「保険料が下がり、給付額は上がる」可能性があるのです。

その他のメリット

節税や信用力・資金調達・保障以外にも、制度面でメリットがあります。

例えば、法人は決算月を自由に決められるので、経営状況に合わせて計画・戦略を立てることができます。
また、会社設立した場合、経営者は出資の範囲の責任しか負う必要がありません(有限責任)。
この点で見ても、個人事業主よりもかなりリスクが少ないといえるでしょう。

起業時に会社設立をするデメリット

もちろん、会社設立にはデメリットもあります。
具体的に生じるのが、コストに関する以下のデメリットです。

会社設立コストがかかる

会社設立には費用がかかります。

株式会社の場合:定款認証+登録免許税で約25万円
合同会社の場合:登録免許税約6万円

関連記事:株式会社設立の費用は最低いくら?設立コストを賢く抑えよう!

関連記事:合同会社設立の費用は?司法書士や税理士に代行を依頼するべきか?

会社維持コストがかかる

<赤字でも住民税が発生する>

会社設立すると、事業が赤字であっても法人住民税の均等割を負担する必要があります。毎年約7万円の支払いとなります。

<決算申告が必要となる>

決算申告は当たり前でもありますが、株式会社の場合、毎年決算公告も行わねばなりません。事務負担も増えますし、官報に掲載する場合は6万円の費用が発生します。

交際費に上限が加わる

個人事業主は交際費に上限がありませんが、会社設立して法人になると上限が設定されます。(中小企業の場合は800万円)

個人事業主で起業し、その後会社設立して法人化する場合

個人事業主で起業した人が会社設立して法人化した方が良い場合

当初はあまり事業を大きくする予定もなく、手軽に事業をスタートできることから、「個人事業主」としてまずは起業する方が多い傾向です。

しかし、ビジネスが好調で売上が大きくなると困ってくるのが、納税額の高さです。

実はある程度の売上がある個人事業主は、あえて会社設立する方がお得な場合があります。
特に、節税という点で会社設立による法人化のメリットは大きいものです。

個人事業主として始めた事業が軌道に乗ってきたら、会社設立を検討する経営者は多いです。
個人事業主が会社を設立することを「法人成り(ほうじんなり)」といいます。

法人成りをするためには費用もかかりますが、ある程度の売上が維持できている事業であれば、会社設立した方がメリットが大きくなるといえます。

会社設立を考えた方が良い場合

では、どのくらいの売上があれば、会社設立のメリットを得られるのでしょうか?

簡単な目安ですが、利益(所得)が500万円を超えた場合は、法人化のメリットが見えてきます。
もし1,000万円を超えるようであれば、ほぼ法人化メリットの方が大きいので、積極的に動いて問題ありません。

売上が500万~1,000万の場合は、個人事業主が有利か、会社設立による法人化が有利かの分かれ目です。
事業形態や規模・家族形態によって状況は変わりますから、具体的にシミュレーションをした上で決定する方がいいでしょう。

会社設立を考えるべきタイミング

売上が少ない段階での会社設立は、費用面でデメリットも大きいものです。

会社設立費用(株式会社であれば25万円かかります)や会社維持費用も発生しますし、決算業務の手間も増えます。
また、個人事業主の時は不要だった法人税や消費税も発生するので、トータルで考えると税負担が多くなることが予想されるのです。

一般的なタイミングとしては、利益(所得)が500万円を超えたあたりが、個人事業主が会社設立を検討するラインだと言われています。
事業規模が拡大し、このくらいの所得が見込めるのであれば、法人成りを検討し始めても良いかもしれません。

自分で判断が難しい部分もあるでしょうから、税理士などの専門家に相談すると、自分にとって一番有利なタイミングで法人化できるはずです。

社会保険(社保)と国民健康保険(国保)で会社設立のメリット・デメリットを比較

社会保険(社保)と国民健康保険(国保)には、どのような違いがあるのでしょうか。
それぞれの違いを知ることで、また別の視点から会社設立のメリット・デメリットが見えてきます。

個人事業主は国民健康保険(国保)

個人事業主の場合の保険制度は、国民健康保険です。
各自治体ごとに運営されており、所得に応じて保険料額が異なります。

上限額は決まっているとは言え、事業の所得が上がるほど保険料負担も重くなるというわけです。
また、家族がいる場合は、たとえ扶養の範囲内であっても一定の保険料が発生します。

年金部分については個人事業主は国民年金のみの支払いとなるため、満額納めていたとしても将来的にもらえる年金は最小限。
老後に備えるためには、国民年金だけというのはちょっと心許ないというのが現実です。

法人化すると社会保険(社保)

法人化すると、社会保険の加入が義務付けられます。

社会保険は役員報酬の額に連動して決まるので、法人化して役員報酬を設定することで、支払う保険料を抑えることができます。
保険料の半額は事業主負担となるため、会社自体の支出は発生しますが、その分税金も減りますからある意味「節税」とも言えます。
また、社会保険の場合は、扶養の範囲内の家族であれば保険料を支払うことなく保険に加入できます。

年金部分については、厚生年金保険にも加入できる点も見逃せません。
国民年金分+厚生年金分の受給が見込めますから、老後の備えも潤沢になるというメリットがあります。

個人事業主で起業して、売上が伸びたら会社設立による法人化を検討しよう

個人事業主の法人化は、「会社設立・運用にコストがかかるものの、経費が計上しやすい」という点がポイントです。

自分は個人事業主が良いのか、会社設立して法人化する方が良いのか迷っている場合は、税理士などの専門家に相談するのも一つの手です。
自分にとって一番良い会社設立タイミングを教えてもらえるでしょう。

今回解説したメリット・デメリットをもとに、ある程度の売上が維持できたら会社設立を検討してみてください。

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