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株式会社設立の人数は何人から?1人で良い条件とメリット・デメリット

株式会社を設立したいと考えているが、「本当に自分1人だけでも大丈夫なのだろうか」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

実際にひと昔前までは、1人で株式会社の設立・経営をすることはできませんでした。
つまり、株式会社の設立に関して人数制限があったのです。

しかし、現在では多少の条件はあるものの、1人で株式会社の設立と経営をすることができるようになりました。

そこで今回は、1人で株式会社を設立して経営するための条件や気をつけるべきことなどを紹介します。
1人で株式会社の設立・経営を検討している方は、事前に必ずチェックしておきましょう。

株式会社設立の人数は発起人1人からでも良い

株式会社を設立・経営する人数は、1人で大丈夫です。

なお、株式会社を設立する人と経営する人は、発起人と取締役として区別があります。

  • 発起人:会社の基本事項やルールを決めて資本金を払う人で、設立後は株主になる
  • 取締役:発起人に選ばれて会社を経営していく会社の役員(機関)

参照:e-Gov法令検索(総務省)「会社法」

つまり、発起人はお金を払って株式会社を作り、自分の会社の経営を任せる取締役を選ぶのです。
そして、発起人は株式会社の設立後に株主となります。

もちろん、発起人が自分自身を取締役に選べるため、自分が作った会社を自分で経営する、いわゆる1人オーナー社長という選択も可能です(所有と経営の一致)。

ちなみに、株式会社の発起人と取締役が1人で足りるようになったのは、以下のように法改正が進められてきたことが背景にあります。

  • 1990年の商法改正:発起人が7人以上必要だった制限を廃止
  • 2006年の会社法:取締役が3名以上必要だったところ、1人以上で良いこととなった(会社法第326条

現在では、原則として発起人や取締役の人数を気にする必要はなくなりました。

会社設立の人数が1人でも良いのには2つの条件がある

発起人と取締役に人数の制限はなく、発起人は自分自身を取締役に選任できますが、2つだけ条件があります。

  • 会社設立の法人形態が合資会社ではないこと
  • 株式会社は株式に譲渡制限を設けていること(非公開会社)

会社設立の法人形態が合資会社ではないこと

株式会社の設立なら気にする必要はありませんが、合資会社を設立するのであれば、1人では設立できません。

なぜなら、合資会社は最低でも以下の2人が必要だからです。

  • 有限責任社員
  • 無限責任社員

なお、社員とは原則として会社にお金を出して、会社を経営する人を指します。

設立しようとする持分会社が合資会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。

引用元:e-Gov法令検索(総務省)「会社法(第576条第2項)」

株式会社ではなく合資会社という会社形態を紹介しましたが、そもそも設立できる法人形態は、以下の4つがあります。

  • 株式会社(有限責任)
  • 合同会社(有限責任)
  • 合資会社(有限責任+無限責任)
  • 合名会社(無限責任)

株式会社を除く残りの3つの会社形態は持分会社であり、出資者と経営者が同じ人であるのが特徴です(所有と経営の一致)。

また、有限責任と無限責任では、会社倒産時などで会社の借金を出資額の限度を超えて負担する責任があるかどうかの違いがあります。

株式会社と合同会社は有限責任であり、知名度が高く、設立件数が多いのはこの2つの法人形態です。

株式会社は株式に譲渡制限を設けていること(非公開会社)

株式会社は、株式の一部でも譲渡制限を設けていない場合、取締役会の設置義務があります。
取締役会は取締役3人が必要なので、1人で設立しても取締役を3人選ばなければなりません。

具体的には、次のような関係になります。

  • 公開会社とは、株式の譲渡について株式会社の承認を要しない会社(会社法第2条第5項)
  • 公開会社は、取締役会を設置しなければならない(会社法第327条)
  • 取締役会設置会社は、設立時取締役は3人以上でなければならない(会社法第39条)

公開会社になることを避けるには、定款を作成する時に「当会社の発行する株式の譲渡による取得については、取締役の承認を受けなければならない」などと記載します。

株式会社設立の人数が1人のメリットとは?

株式会社設立の人数が1人(1人オーナー社長)の場合のメリットは、以下のようなことが挙げられます。

  • 株式会社設立の手続きが比較的ラク
  • 株式会社設立後の経営がスムーズ
  • 役員報酬や租税公課などの固定費を抑えられる

株式会社設立の手続きが比較的ラク

株式会社を1人で設立する場合、株式会社設立の手続きがラクになります。
2人以上で株式会社を設立しようとすると、会社の基本事項やルールを決める際に、スムーズに話がまとまらない場合があるからです。

発起人が決める事項には、次のようなものがあります。

  • 商号
  • 本店所在地
  • 事業目的
  • 資本金の額等
  • 発行可能株式総数
  • 発起人が割当を受ける株式
  • 機関設計
  • 設立時取締役(役員)
  • 事業年度

発起人が2人以上なら、発起人全員で決めなければならないのです。

主に発起人1人の場合を想定していますが、株式会社設立の流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:株式会社を設立する流れ・手順をポイントとあわせて徹底解説!

株式会社設立後の経営がスムーズ

1人で株式会社を設立し、そのまま自分が会社を経営するのであれば、株式会社の経営はスムーズに進めていけます。

一方で、株主が2人以上または取締役会を設置(3人以上の取締役)すれば、経営判断がうまくまとまらないケースも出てくるでしょう。

なぜなら、株式会社では株主総会で決めるものと取締役会で決めるものがあるからです。

  • 取締役会設置会社:株主総会で決議するものと取締役会で決議するものがある
  • 取締役会非設置会社:株主総会で決議する

決議要件としては、過半数の一致や3分の2以上の一致などがあります。
つまり、意見が食い違った時には経営判断がうまくまとまらない場合があるのです。

当然、株主総会などを招集する手間もあります。

役員報酬や租税公課などの固定費を抑えられる

取締役が1人であれば、役員報酬や租税公課などの固定費を抑えることができます。

取締役にかかる役員報酬や租税公課とは、具体的には以下の通りです。

  • 役員報酬:株式会社は、取締役に業務執行を委任し、報酬を支払う
  • 租税公課:役員の任期満了時には役員変更登記が必要で、その際に登録免許税という税金を支払う

株式会社は取締役に経営を委任しますので、通常は取締役による役務の提供に対して報酬を支払います。

また、株式会社の役員は法務局で登記する必要があり、同じ人が取締役を続行する場合でも「重任」として役員変更の登記をしなければなりません。
登記には登録免許税がかかり、その額は資本金1億円以下であれば1万円です。

したがって、取締役が1人だけであれば、役員報酬も役員変更登記の登録免許税も最低限に抑えることができます。

株式会社設立の人数が1人のデメリットとは?

株式会社設立の人数が1人(1人オーナー社長)の場合、以下2点のデメリットがあります。

  • 社会的信用度が低くなりやすい
  • 相談相手(経営パートナー)がいない

社会的信用度が低くなりやすい

まず発起人(株主)が1人であることについては、資本金が比較的少額になってしまい、結果として社会的信用度は低めになってしまいます。

また、取締役が1人であることによっても、取締役会を設置できず、比較的社会的信用度は低く見られやすいです。

相談相手(経営パートナー)がいない

いわゆる1人オーナー社長の場合、自分の意のままに経営できる反面、経営に関する相談相手に乏しい一面もあります。

例えば、以下のような場面も考えられるでしょう。

  • もし誤った経営をしていたとしても、それを誤っていると指摘してくれる人がいない
  • 経営判断に困った時も決断までに時間がかかってしまう

誤っていることに気づかないままだと、会社自体のモラルが低下してしまいます。
最悪の場合、法令に反したことをしてしまったり、不祥事を起こしてしまったりするかもしれません。

そこで、最低限の対策としておすすめなのが、外部の専門家などを社外顧問として活用することです。

外部の専門家を上手く活用することで、次のようなメリットを享受することができます。

  • 上からでも下からでもなく、対等な横の関係で経営に関わってくれる
  • ダメなことはダメと上手に伝えてくれる
  • 何でも幅広いテーマの相談ができる

結果として、経営力向上・法令遵守など安定した経営を図っていけるでしょう。

株式会社を1人で設立する1人オーナー社長が気をつけるべきこと

株式会社設立の人数が1人であることのメリットやデメリットを紹介してきましたが、実務的にどのようなことに気をつければ良いかについて紹介します。

  • 会社の利益は役員報酬でもらうことになる
  • 経費が認められにくいことがある
  • 社会保険に加入する手間がある
  • 経営判断の誤りに気づかない可能性がある

会社の利益は役員報酬でもらうことになる

株式会社を設立すると、個人と法人は別人格のため、会社の利益は役員報酬として会社からもらう形が基本となります。

もし会社のお金を私的利用した場合、原則、元金に利息を付けた額を会社に返さなければなりません。
会計上は「役員貸付金」として処理するのが一般的ですが、銀行から融資を受ける際にもあまり印象は良くないので注意しておきましょう。

なお、役員報酬はあらかじめ決めた額を、1年間を通じて毎月定期的に支払うことが原則です(定期同額給与)。

その他、事前確定届出給与や業績連動給与という役員給与の取り扱いがあるので、簡単に概要を示しておきます。

  • 事前確定届出給与:支払う時期と金額を確定した旨を事前に届出て、その通りに支払う
  • 利益連動給与:一定の業績指標と連動させて支払う

参照:国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」

これらの支払いに該当しない場合、損金(いわゆる経費)に計上できません。

役員報酬について簡単な概要を示しましたが、実際の制度の運用は非常に複雑です。
経営者の節税にとって大変重要な部分になってきますので、ぜひ税理士に相談しておくことをおすすめします。

経費が認められにくいことがある

株式会社を設立しても、1人オーナー社長である場合、経費が認められにくいことがあります。
具体的には、福利厚生費などです。

役員の社会保険料(法定福利費)は当然認められますが、法定外の福利厚生費は難しくなっています。
福利厚生は従業員全員に対して平等に行うのが原則ですから、役員しかいない場合には認められにくい傾向にあるのです。

一例として、家族経営の会社で旅行に行った場合、福利厚生費で費用処理するのは難しいでしょう。

社会保険に加入する手間がある

1人で株式会社を経営する場合でも、役員報酬をもらっていれば、社会保険に加入する必要があります。

ここでいう社会保険とは、健康保険と厚生年金保険のことです。
健康保険と厚生年金保険に加入すること自体は、老齢年金の受給額が増えたり、保障が厚くなったりするため、メリットと捉えても良いでしょう。

しかし、事業所として社会保険の適用開始手続き、被保険者としての資格取得手続きを設立から5日以内にしなければなりません。

経営判断の誤りに気づかない可能性がある

1人で会社経営を進めると、前述の通り、経営判断の誤りに気づかないまま誤ったことをし続けてしまう可能性があります。

ただ、取締役を2人以上にすると、その分役員報酬や役員変更登記にかかる登録免許税などのコストがかかってしまうので頭を悩ますところです。

そのような時は、対等な立場で客観的な意見を聞くことができる、外部の専門家の活用を検討してみましょう。

1人オーナー社長にとって最も身近で重要な経営パートナーは税理士

会社および経営者としてのモラルを維持し、正しく安定した経営を行っていくためには、「間違ったことは間違っている」と対等に指摘してくれる経営パートナーが必要です。

さらに、株式会社を設立した後も役員報酬の設定や節税に関わる税務署への各種手続き、資金調達などの必要があります。

このような実情を踏まえると、1人オーナー社長にとって最も身近で重要な経営パートナーは、税理士だと言えるでしょう。

自分自身および自社に合った本当に良い税理士を見つけることが、その後のビジネスの成長・成功に大きく響いてきます。

ぜひ以下の記事も合わせて参考にしていただき、最高の経営パートナーとともに会社設立・起業を進めて行ってください。

関連記事:税理士が教える税理士の選び方。失敗しない12のチェックリスト

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